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AZUKARI

欅の箒づくり

箒作りに仕立てられ、太い幹の上に樹冠が放射状に広がる欅の盆栽

Photo by Sage Ross, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons — Source

箒作り(ほうきづくり)は、箒立ち(ほうきだち)とも呼ばれ、欅の盆栽がほとんど自然に行き着く樹形です。一本の幹がまっすぐ立ち上がり、そこから枝が四方八方へ放射状に分かれ、地面に育つ大木がまとう、あの丸く傘のような樹冠と同じ輪郭を描き出します。

これほど一つの樹種と強く結びついた樹形は、ほかにありません。松であれば十数通りの樹形に仕立てられますが、(けやき、Zelkova serrata の和名)は、多くの場合、箒作りに仕立てられます。

幹は3分の1で枝に譲る

この樹形には、かなり明確な設計があります。幹はまっすぐ立ち上がり、木のてっぺんまでそのまま伸びることはありません。木の高さのおよそ3分の1あたりで、枝が扇のように上へ外へと分かれていきます。下の3分の1は幹と根張り(ねばり、地表にあらわれた根)だけを見せ、上の3分の2が密な球形の樹冠として茂ります。少し離れて見ると、木全体が、太く短い一本の柱の上に載った、一つのドームのように見えてきます。

紅葉した箒作りの欅の盆栽。低い位置で幹が枝に分かれ、細かな枝が扇状に広がって平たい樹冠をつくっている

紅葉した箒作りの欅。幹は低い位置で分かれ、その上はすべて枝でできている。 / Photo by Nejikan, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons — Source

さいたま市大宮盆栽美術館には、A-114と登録された一鉢があります。推定樹齢120年、樹高わずか67センチという欅で、まさにこの構成の見本として展示されています。同館の解説には、樹冠上部の葉が「放射状に配された箒作りと呼ばれる仕立て」であり、「四方に張り出した根と太い幹が安定感を生み出し」ており、そのたたずまいが「大木の趣を漂わせている」とあります。1メートルにも満たない木が、一目でずっと大きな木であるかのように見える。それこそが、この樹形がねらう効果そのものです。

この樹形は発明されたのではなく、見出された

この樹形は、欅という樹種のために発明されたわけではありません。むしろ、木がもともと持っている性質を見出しただけだと言えます。欅は、ニレ科(Ulmaceae)に属し、日本、朝鮮半島、台湾、中国東部に自生する樹種です。植物学の資料では、「短い幹が多数の直立した枝、そして斜めに立ち上がる枝に分かれ、幅広く丸みを帯びた頭部を形づくる」樹形を持つと説明されています。日本の街路に並ぶ大きな欅並木を歩いたことがある人なら、実物大の箒の形を、すでに目にしているはずです。盆栽はその同じ輪郭を、一つの鉢の中に凝縮しているにすぎません。ある定評ある栽培解説は、この樹種を「箒作りの原型そのもの」と言い切っています。

東京・板橋の道路沿いに立つ大きな欅の並木。車道の上に樹冠がひとつのドームのように広がっている

同じ輪郭を、実物大で。東京・板橋の街路に立つ欅。 / Photo by Fred Cherrygarden, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons — Source

この身近さは、庭木としてだけでなく、暮らしの中にも息づいています。欅の木材は日本で古くから重宝され、とりわけ箪笥(たんす、木製の収納家具)の材として、また太鼓(たいこ、日本の伝統的な打楽器)の胴の材として、理想的とされてきました。ヨーロッパやアメリカでニレの木を枯らす伝染病、ダッチエルム病(Dutch elm disease)にも強い耐性を持つことで知られ、海外では被害を受けたアメリカニレの代わりに街路樹として植えられることも少なくありません。つまり欅は、観賞用である以前に、暮らしを支える実用の木でもあるのです。雑木(ぞうき、花や実ではなく樹形や葉を愛でる落葉樹の総称)の中でも、欅は箒作りという型のほぼ中心に位置する樹種であり、木がもともと持つ性質がすでに設計の大半を担ってくれるぶん、作り手の仕事は、その性質を裏切らないよう手を入れ続けることに近くなります。

樹冠は葉2枚ずつ積み上がる

説得力のある箒作りに仕立てるには、劇的な処置ではなく、辛抱強い剪定の繰り返しが必要です。基本の手順は、新しい芽を伸ばし、葉が4枚から6枚ついたところで2枚まで切り戻す、というものです。この一手を生育期のあいだ繰り返すたびに、枝の数は少しずつ増え、小枝の構造が締まっていきます。若い木では、秋に枝と小枝をまとめて束ね、さらにその束どうしを結わえて、箒の形へ導くという伝統的な手法も使われます。

その成果がもっともはっきり現れるのは、葉が落ちたあとです。ある定評ある栽培解説は、欅にとって「冬の樹形と細やかな枝分かれ」こそが、きわめて重要であり、この樹種のもっとも見事な特徴だと述べています。以前の記事「枝ぶりの読み方」でも触れた通り、この細やかな枝の構造は、どの落葉樹であっても、じっくり見る者に応えてくれる部分です。不出来な枝一本を隠す場所がどこにもないからです。夏の葉は輪郭をやわらげて緑のドームに変え、冬はそれを削ぎ落とし、この樹形全体の土台となっている骨格をあらわにします。

1.2メートルが三十メートルに見える

米国国立盆栽・盆景博物館の「日本コレクション」に、この記事の冒頭の写真の欅があります。1895年から育成が続けられ、1976年に糸川義文氏から同館に贈られた一鉢です。同館自身の解説には、この木がわずか約1.2メートル(4フィート)ほどしかないにもかかわらず、「太い幹、力強い根張り、先細りになった枝ぶりによって、大木であるかのような姿を見せている」とあります。これは、箒作りという樹形が目指すものを、ほとんどそのまま言い当てた言葉です。

この狙いは、「樹形という設計図」で紹介したような、盆栽の樹形全体の中に置いてみると、より分かりやすくなります。直幹が一本の途切れない線でその力強さを語るのに対し、箒作りは「数」でそれを語ります。何十本もの小さな枝が、もし地面に育っていたなら三十メートルの高さと一世紀近い年月を必要としたはずの樹冠を、代わりに引き受けているのです。この樹形はまた、「一本立ちの大木に学ぶ」で書いたような、盆栽が繰り返し手本にしてきた自生の姿とも重なります。田んぼのそばや神社の鳥居の脇に立つ一本の欅は、いわば箒作りという樹形の、実物大の見本写真なのです。

この木は年に二度、手間に応える

このように仕立てられた欅は、ほかの落葉樹の盆栽と同じように、地味だけれど欠かせない手入れを求めます。夏は水を切らさないこと、新しい枝を締まった状態に保つための十分な日照、そして厳しい霜からの保護です。けれどその手間は、年に一度ではなく、年に二度報われます。夏は密な樹冠の姿で、冬は裸木の姿で。盆栽として仕立てられる樹種の中でも、これほど両方向で自らの構造をあからさまに見せてくれる木は、そう多くありません。

結局のところ、それがこの樹形の静かな魅力なのだと思います。よくできた箒作りには、隠されているものが何一つありません。幹、枝が分かれる位置、枝の本数と間隔。そのすべてが一年中見えたままで、しかもその形は、日本の街を歩く多くの人がふだん気にも留めずに通り過ぎている、ごくありふれた木から借りてきたものです。こうした欅が誰かの手に託されるとき、Azukariが担う役割は、この率直さを季節ごとに裏切らないよう保つことです。放射状に広がる枝を保つための剪定を記録し、次の持ち主へと引き継いでいくこと。それによって、持ち主のもとに渡った木が、鉢の中にあってもなお、いつも並木の角に立っていたのと同じ木として読み取れるようにすることです。

参考リンク

  1. さいたま市大宮盆栽美術館「収蔵品 A-114 欅」 — 推定樹齢120年、「箒作り」に仕立てられたZelkova serrataについての館の解説。
  2. National Bonsai Foundation「Japanese Collection」 — 1895年から育成が続けられ、1976年に糸川義文氏から寄贈された欅(Zelkova serrata)についての収蔵記録。
  3. Bonsai Empire「Zelkova, Japanese Elm care guide」 — 欅を「箒作りの原型」とする解説、および葉4〜6枚での切り戻しや秋の枝の束ね方といった剪定技法について。
  4. Wikipedia「Zelkova serrata」 — 自生地、ニレ科という分類、自然樹形、箪笥・太鼓に使われる欅材、ダッチエルム病への耐性について。
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