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盆栽の種類

松だけではありません。もみじも、梅も、姫りんごも、スミレも、盆栽になります。盆栽の五つの種類、サイズによる分類、樹種ごとに見せる一年の顔、そして世界九か国でそれぞれの樹が盆栽になっている姿を見ていきます。

MKT-002 真柏 40年・半懸崖

Week 1・Week 2 では、なぜ盆栽が何十年も同じ大きさのままでいられるのか、その技術と思想についてお話ししました。鉢の容量、剪定・針金・根切り、そして縮景という考え方。

今週は、別の角度から見てみます。盆栽は、どんな木で作られるのでしょうか。

五つの種類

盆栽は、用いる樹種によって、大きく五つに分けられます。

種類 代表樹種 楽しみ方
松柏類(しょうはく) 黒松、赤松、五葉松、真柏、杜松 常緑、一年を通じて変わらない緑。樹勢が強く、何百年でも生きる
雑木類(ぞうき/葉物) もみじ、欅、いちょう、ぶな 春の芽吹き、夏の濃緑、秋の紅葉、冬の枝姿 — 四季が一鉢の中で巡る
花物類(はなもの) 桜、椿、梅、皐月、サンゴジュ 数日の開花のための一年。花、香り
実物類(みもの) 姫りんご、花梨、柿、ピラカンサ 小さな実が結び、色づき、季節を運ぶ
草物類(くさもの) スミレ、ケイトウ、タンポポ、山野草、苔 樹木より短命だが、最も気軽に始められる

佐伯さんが出品中の4つの盆栽 — MKT-001(45年の黒松)と MKT-002〜MKT-004(真柏)は、すべて松柏類に属します。

サイズによる分類

盆栽は、樹高によっても三つに大別されます。

サイズ 樹高 場所
大品盆栽 60cm 以上 存在感と風格。エントランス、ロビー、床の間
中品盆栽 20〜60cm 持ち運びやすく、手入れも容易。一般的な「盆栽」
小品盆栽 20cm 以下 手のひらサイズ。デスクやカウンターにも

さらに小さなものは、ミニ盆栽プチ盆栽豆盆栽などと呼ばれます。

MKT-001〜MKT-004 はいずれも樹高 30〜50cm 前後、中品盆栽にあたります。

松柏 — 常緑の盆栽

MKT-004 真柏

松柏とは、松と柏(コニファー類)の総称です。黒松、赤松、五葉松、真柏、杜松(としょう)が代表樹種です。

松柏が盆栽の王道とされてきたのには、いくつかの理由があります。

ひとつ。常緑なので、葉色が一年を通じて変わりません。何十年も鉢の中で「同じ姿」を保つ盆栽として、もっとも適しています。

ふたつ。葉が小さく、枝振りが繊細です。樹の輪郭を緻密に作り込めます。

みっつ。樹勢が強く、何百年でも生きます。受け継がれる盆栽として、時間に強い素材です。

Week 1 と Week 2 でお話ししてきた「変わらない美」は、この松柏の世界です。

▸ 松柏の盆栽をもっと見る: @shunkaen_bonsai_musium(春花園BONSAI美術館・東京)

雑木 — 一年に四つの顔を見せる盆栽

国風賞・落葉した雑木の冬の枝姿

雑木盆栽と呼ばれる落葉樹のグループがあります。もみじ、けやき、いちょう、ぶな、榎(えのき)。

これらの木は、一年に四つの顔を見せます。

春。冬を越した枝先から、淡い緑の芽がほどけます。もみじであれば、最初の葉は赤に近い色をしています。

夏。葉が濃い緑になり、樹冠が陰を作ります。鉢の上に小さな森が現れます。

秋。葉が一気に色を変えます。もみじの紅葉、いちょうの黄葉。鉢の中で、山が燃えます。

冬。葉がすべて落ち、枝振りだけが残ります。皮の質感、枝の流れ、根のうねりが、もっとも見えやすい季節です。

▸ 雑木の四季を見る: @bonsai_seikouen(清香園・東京の老舗盆栽園)

花物 — 咲く瞬間のための盆栽

椿の盆栽・満開

梅、桜、椿、皐月(さつき)、サンゴジュ。花物の盆栽は、咲く瞬間のために、何ヶ月も整えられます。

剪定の時期を間違えれば、その年の花は咲きません。芽をどこに残すか、いつ施肥するか、つぼみをいくつ残すか。すべてが、たった数日の開花のための計算です。

梅の盆栽が二月に咲いたとき、その一輪のために、前年の春からの十一ヶ月があります。

▸ 花物の盆栽を見る: @bonsaimyo(盆栽妙・香川県高松市)

実物 — 実を見る盆栽

姫りんご、花梨、柿、ピラカンサ。実を見るための盆栽です。

花物が「咲くこと」を待つように、実物は「実ること」を待ちます。春に小さな花が咲き、夏に若い実が結び、秋に色づく。一年の終わりに、鉢の中に小さな収穫が現れます。

姫りんごの実は、3センチほどの本物のりんごです。樹は60センチに留まり、果実だけが本来のサイズを保ちます。「ミニチュアの中の、ほんものの実」という不思議な構造を持つのが、実物盆栽です。

草物 — 草花の盆栽

樹木ではなく、草花を盆栽仕立てにしたものです。スミレ、ケイトウ、タンポポ、山野草、そして苔。

樹木の盆栽が「数十年から数百年」のスケールで時間を扱うのに対し、草物盆栽は「一年」あるいは「数ヶ月」のスケールで時間を扱います。儚いものを慈しむ感覚が、この分野の中心にあります。

茶席に添えられる「飾り草」としての伝統もあり、本格的な松柏盆栽の入り口として親しまれてきました。

一年を通した盆栽の顔

藤の盆栽・季節の象徴

つまり、盆栽はひとつの呼び名のなかに、まったく違うリズムを持つ木たちを抱えています。

松柏は、変わらない時間を生きる。

雑木は、変わる時間を映す。

花物は、咲く瞬間を待つ。

実物は、実る瞬間を待つ。

草物は、短い時間を慈しむ。

どの盆栽も、季節の循環と関係を結んでいます。そして、その関係の結び方が、樹種ごとに違うのです。

盆栽は「動かない芸術」ではありません。「ゆっくりと、しかし確実に動く芸術」です。

世界の国々の、それぞれの盆栽

盆栽は今、日本以外の国々でも、その土地ならではの樹種で作られています。文化のなかで深い意味を持つ木が、そのまま盆栽になっています。

  • 🇯🇵 日本 — 黒松(くろまつ / Pinus thunbergii)。Week 1・Week 2 でお話ししてきた、盆栽の王道 — National Bonsai & Penjing Museum
  • 🇰🇷 韓国 — ソサナム(韓国楓 / Carpinus turczaninovii)。海岸の崖に育つ、韓国 bunjae の代表 — Bonsai Mirai
  • 🇻🇳 ベトナム — Cây Sanh(カイサイン / Ficus microcarpa)。ナムディン省産の名木は2,000〜4,000ドルで取引される — Sa Dec Bonsai Museum
  • 🇪🇸 スペイン — エンシナ(Holm Oak / Quercus ilex)。デエサ景観の主木、イベリコ豚のドングリ食、千年樹「Encina Milenaria」が国定記念物 — Real Jardín Botánico (CSIC) Madrid
  • 🇮🇹 イタリア — イタリア糸杉(Italian Cypress / Cupressus sempervirens)。トスカーナ丘陵の縦長シルエット、ルネサンス庭園の代表樹 — Crespi Bonsai Museum
  • 🇬🇷 ギリシャ — 野生オリーブ(Olea europaea var. sylvestris)。アテナ女神に捧げられ、古代オリンピック勝者の冠 — Olive Tree of Vouves (Crete)
  • 🇬🇧 英国 — 西洋サンザシ(Crataegus monogyna)。英国の生垣と田園、メイデーに祝われる木 — National Bonsai & Penjing Museum
  • 🇺🇸 米国 — コーストレッドウッド(Sequoia sempervirens)。カリフォルニア州木、世界最高樹高(381 フィート)— Pacific Bonsai Museum
  • 🇦🇺 豪州 — 鋸葉バンクシア(Banksia serrata)。1770 年にジョセフ・バンクスが採集した4種の Banksia のひとつ — Australian National Botanic Gardens

あなたの国にも、文化のなかで生きてきた木が、必ずあります。

種類は問わない

けやきの若木盆栽

ほかにも盆栽になる樹種はたくさんあります。樹種だけを数えれば、200種以上あると言われています。

それでも、どの種類であっても、「盆栽」と呼ぶための条件は変わりません。鉢の中で生きていること。景色を見立てる意志があること。長期に育てて、受け継がれていくこと。

種類は問わない。けれども、その種類によって、見える時間の流れが変わる。

それが、盆栽の世界です。

次回(Phase 1 最終回)は、一本一本の盆栽に「銘(めい)」と呼ばれる名前がついている、というお話をします。木に名前を与えるという行為そのものが、日本の盆栽文化の中心にあります。

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