
アレッポマツ(Pinus halepensis)、直幹仕立て、樹齢約60年、イタリア・ペーシャ盆栽美術館蔵。/Photo by Sailko, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons — Source
作り手のもとに届く幹には、たいてい何かしらの来し方が刻まれている。光を求めて傾いた跡、倒れた隣木を避けた曲がり、昔の傷が残したねじれ。直幹(ちょっかん、「straight trunk」)に仕立てられるのは、そのどれも持たない、ごくまれな幹だけである。根元から一切曲がることなく一本の線として立ち上がり、その線を自分の先端まで保つ幹だ。以前紹介した盆栽の基本の樹形の中でも、もっとも古く、もっとも容赦のない型がこれにあたる。
直幹とは、やり直しのきかない樹形である。根元から先端まで、太いところから細いところまで、一切曲げずにまっすぐ立ち上げる。単純な分だけ、欠点がそのまま見えてしまう。
一本の軸がすべてを決める
言葉にすれば単純だが、偶然に満たせるものではない。根張り(ねばり、「surface roots」)の中心から頂点まで、一本の垂直な軸が通り、幹はその軸から少しもずれることなく、太いところから細いところへと形を変えていく。曲がりに逃げることも、昔の傷のねじれを残すこともできない。実際の仕立てでは、幹の高さのおよそ四分の一から三分の一あたりに最初の枝を置くのが目安とされ、二本目の枝はその反対側の少し高い位置に、三本目は奥行きを出すために後ろ向きに配される。それ以降の枝も左右交互に、上へ行くほど間隔を詰めながら重ねることで、棒に小枝を挿しただけの姿ではなく、柔らかな三角形の輪郭として見えてくる。頂点だけは幹の線そのものではなく一本の芯となる枝に委ねられることが多く、これがこの樹形の中で唯一、目にやわらぎを許す場所である。
まっすぐな幹は、来し方ではなく意図を語る
これほど型が崩れを許さないからこそ、直幹は模様木とはまったく違う印象を与える。曲がった幹は、その木自身の来し方——風、倒れた隣の木、育った斜面——を思わせる。まっすぐな幹が思わせるのは、むしろ意図だ。誰かが植え、手入れをし、その一本の線に保ち続けてきたという意図である。同じ視覚の文法は、盆栽の外、日本の暮らしの中にも見つかる。日光へと続く道に並ぶ杉並木——1625年ごろ、大名・松平正綱によって植樹が始まり、現在ではギネス世界記録に世界最長の並木道として認定されている、樹齢およそ400年の杉並木だ。盆栽の直幹という型が、この並木そのものに由来すると言う人はいないが、両者には同じ発想がある。一本の幹、あるいは連なる幹を、崩れのない一本の線に保つことで、格式と敬意を示すという発想であり、それは、より会話的でやわらかな模様木の曲線とは対照をなす。
直幹に、あとから直す余地はない
曲がった幹は、小さな妥協をいくつも吸収できる。太り方がやや不均一でも、頂点が少し中心からずれていても、目はすでに曲線を追っているため、厳密な対称性を求めていないからだ。直幹には、そうした逃げ場がない。わずかな折れ、位置を誤った太り、根元から続く垂直線からほんの少し外れた頂点——そのすべてが、個性ではなく欠点として、即座に目に入ってしまう。だからこそ、直幹の難しさの大半は、仕立てながら直すことよりも、素材を選ぶ段階に集中している。何年も苗床で育てられ、あるいは種からこの形を目指して育てられた、まっすぐさと太り方がすでに備わった幹が望ましく、山で採取してあとから形をこじつける木には向かない。枝が決まってしまえば、幹そのものに針金をかけることはほとんど必要なくなる。この型が求める正直さは、仕立てが始まるよりも前、素材選びの段階でほぼ決まっている。直幹を見極めるときは、仕立てで何を直したかよりも、素材がそもそも何を直す必要がなかったかを見るとよい。
松柏はすでに半分仕立てられている
直幹は、広葉樹よりも松・真柏・杉といった松柏類で仕立てられることが伝統的に多い型である。欅などの広葉樹でも規律よく仕立てれば可能だが、少数派にとどまる。松柏類は育つ過程で一本の主軸となる芯を保ちやすく、比較的少ない手直しで、直幹に必要なまっすぐで均等な太りを持つ幹になる。一方、多くの広葉樹は本来枝分かれや分岐が多く、模様木のような柔らかな曲線に仕立てられることのほうが多い。松の中でも、五葉松(ごようまつ、「Japanese white pine」)と黒松(くろまつ、「Japanese black pine」)は、直幹の代表格として繰り返し名前が挙がる樹種だ。その樹皮と葉の色は、盆栽の語彙の中でももっとも古く、もっとも格式高い部類に属するこの型に似合い、庭の小道というより神社の参道に近い佇まいを持つ。
型は、仕立てが始まる前に決まっている
直幹は、多くの盆栽が向かう先ではなく、作り手が最初に選ぶ型でもない。あらゆる型がそうであるように、その規律は仕立てが始まるより前にすでに決まっている。求められるのは、その姿を支えられるだけ正直な素材と、曲線が許すはずの小さな妥協を手放す覚悟だ。その代わりに手に入るのは、一目で規律が伝わる幹——何十年ものあいだ保たれてきた、ごまかしの入り込む余地のない一本の線である。仕立ての途上にある直幹は、誰が見ていようといまいと、その線を保ち続ける。Azukariが所有者に届ける季節ごとの記録は、何が変わったかの報告ではない。今季もまた、何も直す必要がなかったことの確認である。
参考リンク
- Bonsai Society of Greater Cincinnati「Formal Upright 'Chokkan'」 — 直幹の幹の太り方、幹の高さのおよそ四分の一あたりに置かれる最初の枝の位置、三角形をなす枝の配置についての解説。
- Virginia Bonsai Society「Formal Upright Style」 — 直幹の枝の配置規則、頂点の形、および松・真柏・カラマツ・トウヒ・杉など、この型に適した樹種についての解説。
- Wikipedia「Cedar Avenue of Nikko」 — 1625年ごろ松平正綱によって植樹が始まった日光の杉並木の歴史と、ギネス世界記録による世界最長の並木道としての認定についての記述。
- Bonsaiable「Formal Upright Bonsai」 — 直幹が伝統的に松柏類と結びつけられてきたこと、欅などの広葉樹での仕立ては少数派であることについての解説。