
フィカス・レツサ 模様木 推定樹齢50年 イタリア・ペーシャ盆栽美術館。根が幹元からほぼ全方向に広がっている。/ Photo by Sailko, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons — Source
よく仕立てられた盆栽の前に立ったら、まずその足元を見てください。そこにあるのが根張りです。幹の付け根から地表を渡って四方に広がる根のことで、盆栽の姿の中でも、年月を近道して作ることができない数少ない部分です。
盆栽の根は、切り開かなくても樹齢を読み取れる、数少ない場所です。
根張りとは何か
苗木の多くは、多くの実生がそうであるように、まっすぐ下に伸びる太い根を一、二本持ち、細い横根は土の中に隠れています。根張りとは、この性質に何年もかけて逆らい、根を下ではなく横へ誘導し続けた結果、根が持ち上がり、太くなり、ついに土の上に姿を見せるようになったものです。大地に立つ大木の根が地表で扇のように広がるのと同じ形が、鉢の中に生まれます。この理想は「八方根張り」と呼ばれ、幹の周りをぐるりと、どの方向にも均等に根が張っている状態を指します。八方に根が張った木は、鉢に置かれているというより、鉢の中に立っているように見えます。
何年もかけて作る
根張りは、放っておいて育つものではなく、作るものです。植え替えのたびに、まっすぐ下へ伸びる太い根を切り、横へ伸びる浅い根だけを残す。行き場を失った横根は、そのたびに少しずつ太くなっていきます。若い素材を平らな瓦や浅い箱の上で育てる生産者もいますが、理由は同じで、下へ伸びる余地がなければ、根は横へ伸びるほかありません。また、早春に幹の根元を針金できつく縛り、養分の流れを一部せき止めることで、その少し上の位置から新しい根を出させる方法もあります。一方向にだけ根が欠けている木には、根接ぎという技術で若い苗木の幹そのものを根として接ぐこともできます。一、二年かけて接いだ部分が癒合し、もとは別の若木だったものが、やがて古い木の根の一部として働き始めます。接いだ苗木自身から伸びる芽は、根として定着するまでの間、こまめに摘み取られます。どの方法をとっても、早くは進みません。人前に出せる根張りができるまでにはおおよそ五年から十年、あるいはそれ以上の植え替えと剪定の積み重ねが必要とされ、見応えのある広がりを作るにはさらに長い年月がかかるとされています。
力強い根が証明するもの
幅広く均整の取れた根張りは、見た目の飾りだけのものではありません。実際に物理的な役割を果たしています。太い幹が風を受けても浅い鉢の中でぐらつかないよう支えているのは、一本の直根では決して代われない働きです。とりわけ懸崖という、幹が鉢のふちより下へ垂れ下がる樹形では、垂れる方向とは反対側の根張りがものを言います。そこがしっかり張っていなければ、木全体がいまにも倒れそうに見えてしまいます。片側だけ太く、反対側は貧弱な根張りは、見る人が理由を意識するより先に、目に違和感を与えます。そう考えると、根張りは幹の下にある飾りというより、その上に立つすべてのものを支える論拠だと言えます。幹の傾き、コケ順、木全体の佇まいが本物であることを、根が黙って証明しているのです。
根で木を読む
木の年輪は、本来は隠れているものです。幹の内側に閉じ込められ、木を切らなければ読むことができません。根張りはその逆で、何年もの手入れの跡が土の上にそのまま現れている、数少ない場所です。木の格を見極めたい生産者や購入者が、枝や葉より先にまず根元を見るのはそのためです。樹皮は技術で古く見せることができ、葉も一季節で整えられますが、幅広く厚みのある、均等に張った根張りだけは、ある程度より先を近道することができません。誰かが何年分もの植え替えに付き合っていなければ、そこにはたどり着けないからです。盆栽の年月がほかにどこに現れるかについては、別の記事で幹の流れや樹皮、真柏の舎利などにも触れています。根張りは、そのリストの端ではなく、いちばん先頭に置かれるべきものです。
結び
ここまで述べてきた作業は、どれも一日で終わるものではなく、そのほとんどは進行している最中には目に見えません。この春に切った根が地表に姿を見せるまでには、また一、二年かかります。接いだ根が根として読めるようになるには、さらに時間がかかります。盆栽の手入れの中でも、もっとも忍耐を要し、もっともすぐには報われない部分です。仕立てる人自身、その形が完成する十年後を見届けられるとは限りません。
Azukariは、この同じ時間の流れの中にあります。日本の作家は、持ち主が植え替えの現場を目にすることのないまま、こうした地味で何年もかかる根の仕事を続け、それでも何をしたかを季節ごとに記録していきます。盆栽の手入れがなぜ止まらないのかについては、こちらの記事でも触れています。木の根張りとは、その積み重ねてきた手入れが、めずらしく目に見える形になった場所にほかなりません。
参考リンク
- Bonsai Empire — The Visible or Surface Roots of Bonsai (Nebari) — 根張りの定義、盆栽の姿における重要性、根を作る剪定技術についての解説。
- Bonsai Empire Japan「根張りについて」 — 植え替え時の根の剪定と、針金による締め付けで根張りを作る方法についての日本語解説。
- Bonsai4me — Approach Grafting Roots for Better Bonsai Nebari — 根張りの欠けた部分に苗木を接ぐ技術と、その期間についての解説。
- 盆栽.com「根と樹の部位関連の盆栽用語の意味一覧」 — 根張りと「八方根張り」という語についての用語解説(根接ぎの項目より)。
- Wikimedia Commons — File: Pescia, museo del bonsai, ficus retusa... — 冒頭画像の出典とライセンス(CC BY-SA 4.0、撮影: Sailko)。