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盆栽の見方:正面、根張り、ジンとシャリ

崖のふちを越えて下へ落ちていく黒松の懸崖盆栽

黒松 45年 懸崖 / 撮影: Azukari

盆栽を前にして、どこを見ればよいか分からない。多くの人が最初に感じることである。葉の数を数えるわけでも、ただ小さいから珍しいと驚くわけでもない。盆栽には、見る順序と見る方向がある。それを知ると、一鉢の前で過ごす時間が変わってくる。

一鉢を読むとは

盆栽の鑑賞とは、一本の樹に流れた時間を、正面から読むことである。鉢の中の小さな樹は、山や森に立つ大きな樹の姿を映し、何十年という年月をその幹や枝に刻んでいる。だから盆栽は眺めるというより、読むものに近い。

正面(顔)

盆栽には正面がある。樹がいちばん美しく見える、ただ一つの方向のことである。人に顔があるように、一本の樹にも顔がある。作家は幹の流れ、枝の配り、根の張り方を見ながら、この一方向を定める。鑑賞する側も、まずその正面を探すところから始める。展示された盆栽は、見る人へ顔を向けて置かれている。少し腰を落とし、樹を見上げるくらいの高さで正面に立つと、幹が空へ伸びる力と、樹全体の均衡がいちばんよく分かる。

正面から見た黒松の懸崖盆栽、幹元から根が四方に広がる

黒松 45年 懸崖(香川産)/ 撮影: Azukari

根張り(ねばり)

正面が定まったら、次は足元を見る。根張りとは、幹の付け根から地表に向かって四方に広がる根のことである。大地をしっかりとつかむこの根の張りが、樹に安定感と、長い年月を生き抜いてきた風格を与える。四方へ均整よく伸びた根張りは、その樹が大地に深く立っていることを物語る。盆栽を見るとき、上の枝や葉だけでなく、この足元の力に目を向けると、樹の格が見えてくる。根は一日で広がるものではない。根張りを読むことは、樹が重ねた歳月を読むことでもある。

立ち上がりと幹のコケ順

足元から目を上へ移す。幹が地面を離れて立ち上がる部分を立ち上がりと呼び、そこから上へ向かって幹がしだいに細くなっていく様子をコケ順という。根に近い元が太く、梢へ向かって素直に細くなっている樹は、自然の大樹と同じ理にかなっている。立ち上がりの角度や曲がりには、その樹が生きてきた風や雪の記憶が宿る。ゆるやかに曲がりながら立ち上がり、落ち着いてはまた立ち上がる幹は、山で長い時間を過ごした樹の形を思わせる。幹を下から上へたどると、樹が歩んできた時間の物語が一本の線になって見えてくる。

ゆるやかに曲がりながら立ち上がる真柏の模様木

真柏 30年 模様木(埼玉産)/ 撮影: Azukari

ジンとシャリ

針葉樹、とりわけ真柏を見るときに欠かせないのが、ジンとシャリである。ジンとは枝の先が白く枯れて骨のようになった部分、シャリとは幹の表面の一部が枯れて白くむき出しになった部分をいう。自然の中では、落雷や寒風、長い年月が樹の一部を枯らし、その白骨化した姿が残る。盆栽はこれを写し取る。白く枯れた部分と、青々と生きている部分が一本の樹の中で隣り合う。その生と死の対比こそ、真柏という樹の見どころである。白い線が幹をどう走り、生きた葉とどう響き合っているか。そこを読むと、一鉢の中に長い時間と厳しい自然が同居していることが分かる。

白く枯れたジンとシャリと、青々と生きる葉が同居する真柏の半懸崖

真柏 40年 半懸崖(栃木産)。白く枯れたシャリと、生きた葉の対比。/ 撮影: Azukari

鉢と樹の調和

最後に、樹を受ける鉢を見る。鉢は単なる入れ物ではなく、樹と対話する器である。力強い松柏には深く重みのある鉢が、繊細な姿には浅く軽やかな鉢が合う。鉢の色や形が樹の雰囲気と響き合うとき、一鉢は一つの景色として完成する。樹と鉢の釣り合いを読むことは、作家がその樹をどう見ているかを読むことでもある。器まで含めて、はじめて盆栽の見方は一巡する。

鉢とともに静かな佇まいを見せる樹齢五十年の真柏の半懸崖

真柏 50年 半懸崖(栃木産)。樹と鉢の静かな釣り合い。/ 撮影: Azukari

これら五つの視点は、一本の樹に流れた時間を読むための入口である。樹は日本で作家が手入れを続け、その経歴と季節ごとの姿は記録として残っていく。所有する人は、置く場所を持たずに一本の樹と長く付き合える。これがAzukariの仕組みである。見方を知ったうえで実物に向き合うと、一鉢の奥行きはいっそう深くなる。樹種ごとの実物はAzukariのマーケットプレイスで見ることができる。

よくある質問

盆栽の正面はどうやって見分けるのか。幹の流れがいちばん美しく見え、根が左右に均整よく張り、枝が見る側へ向かって配られている方向が正面で、展示では見る人に顔を向けて置かれている。ジンとシャリはどんな樹で見られるのか。枯れた部分が腐りにくい針葉樹、とりわけ真柏で顕著に見られ、白く枯れた幹や枝と、生きた葉の対比が見どころとなる。根張りはなぜ大切なのか。四方へ広がる根が樹に安定感と長い年月の風格を与え、その張り方が樹の格と重ねた歳月を物語るからである。

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