日本語EN
AZUKARI

土は普通の園芸土でいいのか

盆栽の幹元に広がる、乾いた粒と湿った粒が混ざった赤玉土

鉢の中、盆栽の幹元に広がる赤玉土。色の薄い粒が乾いた状態、色の濃い粒が水を含んだ状態。/ Photo by Abrahami, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons — Source

答えはノーです。市販の培養土や庭の土は、水と養分をしっかり保持するように作られていますが、それは盆栽の浅い鉢にとっては命取りになります。細かい粒が目詰まりを起こして水はけが悪くなり、そこに溜まった水に浸かり続けた根はやがて根腐れを起こします。盆栽が使うのは、その正反対の性質を持つ、粒がそろった粗い用土です。日本ではほとんどの場合、その中心に赤玉土があります。水をすばやく通しながら、水やりの合間に必要な分だけを保水できるよう選ばれた土です。

なぜ物置にある普通の土ではだめなのか

市販の培養土や庭の土は、盆栽の鉢が必要としていることの正反対の目的で作られています。ピートモス、堆肥、シルト、粘土といった細かい有機物や鉱物の粒で作られているのは、深い花壇や大きな鉢のように、余分な水がどこかへ抜けていく余地がある環境で、その細かい粒が水と養分を根の近くに保持してくれるからです。ところが盆栽の鉢には、この「深さ」がほとんどありません。同じ細かい粒の土を、深さ数センチしかない鉢に詰めると、まったく別の物理法則が働き始めます。細かい粒と粒のあいだの狭い隙間では、重力が水を引き抜くよりも早く毛細管現象が水を引き止めてしまい、排水穴をどれだけ工夫しても、鉢の底には常に水を含んだ層が残ってしまうのです。園芸の世界ではこれを「滞水層」(perched water table)と呼び、土の粒が細かいほど、この滞水層は鉢の高い位置まで上がってきます。盆栽の浅い鉢では、根鉢のほとんどがこの層に浸かってしまうこともあります。酸素の乏しいこの層に根が浸かり続けると、数週間のうちに根腐れが始まります。木の見た目は、その日が来るまで健康そのものに見えることも珍しくありません。正しい用土を選んだあとも、カレンダーではなく土そのものを確かめる習慣は変わらず大切です。この点は水やりは何日おきが正解かで詳しく扱っています。

日本の標準用土は、真逆の発想でできている

日本の、手入れの行き届いた盆栽鉢のほとんどに使われている土は、まったく逆の発想でこの問題を解決しています。赤玉土は、鉢に入る前にふるいにかけられ、丸く粒の大きさがそろえられた、自然の粒状火山性粘土です。粒が細かく不揃いなのではなく丸く均一だからこそ、粒と粒のあいだの隙間が十分に大きく保たれ、水はまっすぐ抜け、その後ろから空気が根に届きます。同時に、粒そのものの内部には水分を蓄えられる孔があり、水やりの合間に根が使う分を確保しています。細かく混ざった土ではなく、粗く均一な土であること。これこそが、盆栽の根を溺れさせる土と、生かし続ける土を分ける違いのすべてです。樹種ごとに配合比率がどう変わるか、そして植え替えのたびに土がどう入れ替わっていくかについては、姉妹記事土という基礎で詳しく書いています。

「水はけのよい培養土」でもまだ足りない理由

盆栽を始めたばかりの人は、サボテンや多肉植物用の培養土に手を伸ばすことがあります。水はけがよいと謳われている土なら大丈夫だろう、という理屈です。近づいてはいますが、たいていまだ十分ではありません。そうした培養土の多くは、盆栽鉢よりずっと深い鉢を想定して配合されており、浅い鉢に入れれば規模は小さくとも同じ滞水層ができてしまいます。あえて普通の培養土を使う育て手もいますが、それはまったく別の段階、つまり幹を太らせるために深い育成鉢や地面で育てている若木の場合に限られます。その段階では、保水力の高さがむしろ根の成長を助けます。すでに観賞用の鉢に収まった木とは、必要としているものが違うのです。

赤玉土が手に入らない土地では

赤玉土は日本国内で採掘される土で、海外では入手しづらかったり高価だったりします。そのため海外の育て手は、同じ材料ではなく同じ原理を軸にした代用土を組み立ててきました。硬く、粒が粗く、繰り返しの水やりでも崩れない鉱物質の粒であることです。もっとも広く使われているのは軽石と溶岩石(scoria とも呼ばれます)で、粒をそろえてふるいにかけ、互いに混ぜたり、入手できる範囲で赤玉土と合わせたりして使われます。野球場のグラウンド用や、油を吸わせる床材として売られている焼成粘土も、サイズをそろえてふるえば盆栽の用土に転用されています。材料そのものよりも、赤玉土と同じ大きく安定した隙間構造を保てるかどうかが基準です。どんな材料が手に入るとしても、混ぜてはいけないのは普通の庭土や培養土です。せっかく組み立てた配合に、同じ細かい粒と同じ滞水層を呼び戻してしまうからです。

木が生き続けるかどうかを決めているもの

これは、日本産の鉱物にこだわるという話ではありません。庭の花壇向けに作られた袋詰めの土が想定していない、鉢の物理的なスケールに、土の物理的なスケールを合わせるという話です。Azukariの作家も、植え替えのたびにこの理屈にもとづいて土を配合し直し、棚にたまたまあった培養土に頼るのではなく、その樹種とその季節に合った、粗く水はけのよい用土を選びます。作業は記録として残り、持ち主が土そのものを目にすることがなくても確認できます。木の根は、袋がどんな用途で売られていたかなど気にしません。根が気にするのは、そのまわりの水がちゃんと抜けていくかどうか、それだけです。

参考リンク

  1. Bonsai Empire — "Bonsai Soil" — 目詰まりした有機質の培養土が盆栽の健康を害する理由と、落葉樹向けにおよそ赤玉土50%・軽石25%・溶岩石25%を配合する水はけのよい無機質用土について。
  2. Michael Hagedorn / Crataegus Bonsai — "Life Without Turface" — 海外で赤玉土やTurfaceの代わりとなる軽石・溶岩石・パーライトの実用性についての、プロの生産者による評価。
  3. GardenMyths.com — "What Is a Perched Water Table?" — 鉢の底にできる滞水層(飽和した水の層)の物理的なしくみと、土の粒が細かいほどその層が高くなることについて。
  4. Bonsai Empire(日本語版) — "おすすめの盆栽土" — 硬化した庭土が盆栽の成長を妨げる旨の警告と、赤玉土・軽石・溶岩石を配合した用土のすすめについて。
  5. きみのミニ盆栽びより — "盆栽の用土" — ピートモスや腐葉土、黒土を多く含む一般的な園芸用土が水持ちはよいものの水はけに欠け、盆栽の培養にはあまり向かないことについて。
盆栽用土赤玉土手入れの基本Azukari