
鉢の中、盆栽の幹元に広がる赤玉土。色の薄い粒が乾いた状態、色の濃い粒が水を含んだ状態。/ Photo by Abrahami, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons — Source
日本の、手入れの行き届いた盆栽鉢の苔をめくると、たいていは同じものが顔を出します。小さく丸い、赤みがかった茶色の粒が、粒と粒のあいだに隙間を残しながら詰まっている土です。これが赤玉土。関東地方一帯を覆う火山灰の層から採れる、自然の粒状粘土で、盆栽栽培にとってもっとも共通の基礎と言える存在です。
盆栽の健康は、苔の下、水を保ちながら同時に逃がす土の中から始まっています。
日本ならではの土
赤玉土は、関東ローム層――関東平野に降り積もった火山灰の層が、長い年月をかけて風化してできた、安定した鉱物質の粘土です。関東ローム層の各地で表面から採掘され、現在もっとも評価が高いのは茨城県産で、栃木県や群馬県も古くからの産地として知られています。採掘後は乾燥させ、ふるいにかけて粒の大きさごとに選別されます。細粒は豆盆栽のような小さな鉢向け、大粒は深い鉢に植わる大きな木向けです。茨城産は特に評価が高く、水を含んでも崩れにくい硬さを持つとされ、盆栽愛好家には欠かせない存在だと業界の記事でも紹介されています。これほど一つの土地の資材が日常の技術に組み込まれている例は、他の国の園芸文化にはあまり見られません。海外の盆栽の教科書でも赤玉土は今なお標準的な用土として名前が挙がり続けており、気候の違いから最終的に別の土に置き換える生産者がいる地域でも、出発点として参照され続けています。
排水と保水、両方を同時に
盆栽の根は、地面に植わった木のように下へ下へと伸びていくことができません。鉢は浅く、丘一つ分の土がしていた仕事を、その浅い土がすべて引き受ける必要があります。細かい粒でぎっしり詰まった普通の畑の土は、この用途には向きません。浅い鉢の底に水が溜まり、その上の土は根が必要とする空気を押し出してしまうからです。赤玉土の丸く多孔質な粒は、この二つの問題を同じひとつかみの土の中で同時に解決します。粒と粒の間の大きな隙間が水を通し、根に空気を届け、粒そのものの内部にある無数の細かな孔が、水やりと水やりの合間に根が使う水分と養分を蓄えておくのです。表面に近いこの通気層は、根張り――木の根が下ではなく横に広がる場所――でもあり、苔のすぐ下の土が、鉢の奥深くの土と同じくらい大切な理由がここにもあります。色の変化もその判断を助けます。粒は水を含むと目に見えて色が濃くなり、乾くとまた薄くなるため、経験を積んだ生産者は一目で鉢の状態をおおよそ判断できます。以前、水やりについて書いた記事でも触れた通り、盆栽の日々の世話には余裕がほとんどありません。だからこそ、この一目で分かる判断材料が持つ意味は、見た目以上に大きいのです。
樹種ごとに変わる配合
配合の比率は樹種によって変わります。松柏類は排水性を重視した配合で植えられることが多く、目安として、硬質赤玉土7に対して桐生砂(群馬県桐生市周辺で採れる粗い鉱物質の用土)3、あるいは軽石を混ぜる例がよく見られます。水やりの合間に根がやや乾く状態を好む松柏の性質に合わせたものです。雑木は根が細かく活発に伸びるため、赤玉土の比率を高め粗い骨材を減らす配合、目安として8対2に近い配合が使われることが多く、水分をより安定させます。皐月(さつき)は少し事情が異なり、一般に鹿沼土――栃木県鹿沼市周辺で採れる、赤玉土よりも色が薄く酸性の強い土――で育てられます。皐月が必要とする酸性の環境は、赤玉土だけでは作れないためです。これらの比率は絶対の決まりではなく、木の勢い、気候、季節に応じて生産者が調整するものであり、あくまで出発点として扱われています。
赤玉土そのものにも寿命があります。水やりを繰り返すうちに粒はやわらかくなり、やがて崩れて細かい土になり、せっかく作った通気の隙間を塞いでしまいます。標準的な等級ではおおよそ1、2年でこの崩れが進みますが、硬い茨城産や、生産者が窯で焼いて硬度を高めた粒であれば、もう少し長く持ちます。盆栽が一定の周期で植え替えされる実務的な理由の一つがここにあります。根だけでなく、土そのものもいずれ入れ替えが必要になるのです。
土を見れば分かること
完成した木の写真には、こうした事情は何も映りません。けれど盆栽園の棚は、苔の上ではなく下を注意深く見る人には、多くを語ります。木の大きさや鉢の深さに合った粒の等級を選んでいるか。植え付け前に土をきちんとふるいにかけ、細かい粉が排水層を塞がないようにしているか。表面が清潔に保たれているか。根張りを太らせている途中の若木と、浅く装飾的な鉢に収まった小品とが、同じ袋の土に植わっていることはあまりありません。両者を同じように扱う生産者は、そうでない生産者ほど深くは考えていない、ということです。声高に主張することのない、静かな判断です。けれど、その木が実際にどれだけ丁寧に育てられているかを知りたいなら、もっとも確かな手がかりの一つがここにあります。
結び
盆栽の目に見える年月は、樹皮や枝ぶり、根元の根張りに現れます。けれどその健康は、もっと下、庭を訪れる誰もがふだん気に留めない土の中から始まっています。
Azukariが向き合っているのは、まさにこの階層です。日本の作家は、この地味で写真に残ることも少ない仕事――植え替えのたびに古い赤玉土をふるい落とし、その木とその季節に合った配合を選ぶこと――を続け、持ち主が土そのものを目にすることがなくても、行ったことを記録し続けます。そうして育てられた木は、鉢のふちから上に見えるものが現れるずっと前から、しっかりと作られた土がつくった根に、その歴史の一部を宿しています。
参考リンク
- Wikipedia — Akadama — 関東ローム層に由来する赤玉土の火山性の起源、採掘と等級分け、排水・保水特性の概要。
- Bonsai Tonight — All About Akadama — 赤玉土が時間とともに崩れていく様子、硬質と軟質の違い、配合の実務についての生産者視点の解説。
- 感動の園芸・儲かる農業 — 栃木産 赤玉土と茨城産 赤玉土 — 栃木産と茨城産の赤玉土の違い、茨城産の硬さと盆栽愛好家における評価についての比較記事。
- 原田園芸(たけのはな商事)— 盆栽用土の配合比 — 松柏と雑木それぞれの、硬質赤玉土と桐生砂・軽石の配合比率の目安。
- Wikimedia Commons — File: Akadama dry and wet.JPG — ヘッダー画像の出典とライセンス(CC BY-SA 3.0、撮影者 Abrahami)。