
Photo by Sailko, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons — Source
イタリア・ペーシャの盆栽美術館に立つ一鉢の柘榴(ざくろ)は、幹が深くねじれて灰色に荒れ、多くの盆栽家が一生をかけてようやく手に入れる樹皮をまとっています。美術館の記録によれば樹齢はおよそ50年で、松であれば同じ貫禄を得るのに三倍の年月を要してもおかしくありません。
柘榴は、多くの樹種が必要とする年月のわずかな部分で古木然とした幹を手に入れながら、その幹だけでは差し出せないものを一年の残りで差し出します。朱色の花が、多くの年で、皮そのものを割ってしまうほど豊かに実るのです。
幹は、他の樹種が一生かけて縮める年月を縮める
盆栽の幹の風格は、たいてい時間をかけてゆっくりと備わります。松であれば、古木と呼べるほど荒れた樹皮を持つまでに、人の一生に近い年月がかかることも珍しくありません。柘榴はそれほど待ちません。それほど手をかけていない木でも、灰色に荒れて剥がれ落ちる樹皮を早くから身につけ、幹そのものもまっすぐ伸びるより、ねじれる方向に育つ傾向があります。中でも「ねじ幹」と呼ばれる品種は、成長するにつれて幹が目に見えてらせん状にねじれていきます。比較的若い木でありながら、ずっと年月を重ねた木の風格を宿せることから、盆栽家に好まれる特徴です。柘榴が模様木(もようぎ)の樹形でよく仕立てられるのも、この理由からで、上の写真のように、幹自身の動きに語らせる樹形になります。幹が古びていく一方で枝は脆いままなので、盆栽家は成長期のうちに、まだ柔らかい若い枝だけに針金をかけ、古い部分には手を入れません。幹には、あえて何も語らせないのです。
花と実は、はじめから別のものとして育てられる
日本の盆栽づくりでは、柘榴を大きく二つの系統に分けます。観賞用の花柘榴は、赤・白・黄と色とりどりの八重咲きの花を咲かせるよう改良された系統で、実をつけることはほとんどありません。実を目的に仕立てられる系統は、柘榴本来の一重咲きの花を咲かせ、初夏から夏にかけて鮮やかな朱色の花を開き、夏の終わりには二度目の、やや控えめな開花を見せることもあります。花のあとに訪れるのが、この木の本領です。丸い実は秋を通じて緑から橙、赤へと色づき、実つきの良い木では、熟すにつれて皮そのものが割れ、中に詰まった赤い種衣がのぞきます。実が色づき始めたら水やりはやや控えめにします。この時期に急に水を与えすぎることが、実が時期を待たずに割れてしまう、よくある原因のひとつだからです。豆(まめ)盆栽や小品向けに改良された矮性品種は、若木のうちからよく花をつけますが、大型の実ザクロ系統ほど確実には結実しません。花を楽しみながら実も期待する者には、なじみ深い引き換えです。
日本での歴史は、盆栽そのものに劣らず長い
老爺柿と並んで、柘榴は日本の実物(みもの、実物盆栽)の中でも最も古くから親しまれてきた樹種のひとつです。実物とは、「松だけではない」で紹介した通り、決まった輪郭ではなく、芽吹き・開花・結実という一年の巡りそのものを楽しむために育てる盆栽の系統を指します。原産地は現在のイランからコーカサス地方にかけての西・中央アジアで、何千年ものあいだシルクロードを渡り歩いたのち日本へ伝わったとされ、伝承では平安時代に渡来し、一説には923年(延長元年)にまでさかのぼるとされます。当初は主に観賞用として、また樹皮を薬用に用いる目的で育てられ、庭木や盆栽として親しまれるようになったのはそれより後のことです。日本の民間信仰では、柘榴は鬼子母神とも結びつけられてきました。よく知られた仏教の説話では、子を奪って食べていた鬼子母神が、子の代わりに柘榴の実を与えられたと伝わります。これも、柘榴という木を盆栽の棚の外側、日本人の暮らしの中に結びつけてきた小さな糸のひとつです。
幹と実は、同じ月に競い合わない
柘榴を他の実もの樹種より選びたくなる理由は、幹と実という二つの見せ場が重ならないことにあります。冬、葉を落としたあとに残るのは、幹肌が示す年月だけです。それも、百年ではなくわずか数十年で、本物の古さを帯びるに至った肌合いです。一年の残りの時期には、同じ木が花をつけ、青い実を結び、やがて色づいていきます。たいていの盆栽では、古びた幹か一年ごとの見せ場か、どちらの辛抱強さを実践するかを選ばなければなりません。同じ木の中で両方が同時に仕上がることはめったにないからです。実もの樹種を選ぶとき、両方を望むなら、候補の木の幹の年季と結実の暦が同じ月を奪い合っているか、それとも順番に譲り合っているかを見極めるとよいでしょう。柘榴では両者が順番に譲り合います。だからこそ、老爺柿と並んで日本の実物の中に長く場所を保ってきたのです。
一鉢は、ひとりの持ち主の年月を超えて続く

Photo by Shuvaev, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons — Source
上の写真は、米国ペンシルベニア州のロングウッド・ガーデンズで育てられている実つきの一本です。同園の記録によれば、仕立てが始まったのは1910年だと伝わります。その年月の長さは、珍しさそのものよりも、この木を手入れするとはどういうことかを言い表しています。同じ幹の上で毎年繰り返される、同じ小さな判断の積み重ねです。実が色づく頃にどれだけ水を控えるか、まだ柔らかいうちにどの枝へ今週針金をかけるか。Azukariは、自分では鉢に手をかけられない持ち主に代わって、この同じ律動を引き継ぐために存在します。木は日本で作家の手のもとに置かれたまま育ち、持ち主のもとに毎年届くのは、その律動の記録――同じねじれた幹が朱色の花をつけ、やがて実を結んでいく記録です。柘榴の盆栽は、完成した作品ではありません。保たれ、繰り返される季節そのものです。
参考リンク
- Bonsai Empire — Pomegranate Bonsai (Punica granatum) Care Guide — ねじ幹(nejikan)品種と矮性品種'Nana'、および柘榴盆栽全般の育成について。
- Bonsai4Me — Punica granatum / Pomegranate Bonsai — 「Neji-kan」品種の螺旋状にねじれる幹と枝、枝の脆さ、樹形づくりと針金かけの注意点について。
- 盆栽日和「盆栽ザクロの育て方と管理方法」 — 幹が自然にねじれ、年月とともに古木の風合いを帯びていく特徴と、剪定・針金かけの実践について。
- Wikipedia日本語版「ザクロ」 — 西・中央アジアを原産地とすること、学名Punica granatum、平安時代(一説に923年)に日本へ伝来したことについて。
- 植木ペディア「ザクロとは」 — 名前の由来と、鬼子母神伝説との結びつきについて。
- キミのミニ盆栽びより「実ザクロの魅力」 — 実ザクロの鮮やかな朱色の一重咲きの花と花ザクロの八重咲きの違い、実の大きさと熟した際に皮が割れる特徴について。