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取り木という近道

水苔とビニールで包まれた取り木。枝は親木につながったままで、その中で根が伸びていく

Photo by Mihailo Grbic, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons — Source

この写真の枝は、まだ親木につながったままです。自分の葉をつけ、自分で水を吸い上げながら、その途中に湿った水苔をビニールで包んだ塊が結びつけられ、中で根が現れるまで傷口を開いたまま保っています。これが「取り木(とりき)」、英語圏の園芸で air-layering と呼ばれる技術です。挿し木も種まきも使わず、枝が親木から完全に切り離される前に新しい根を先に育てておくことで、すでにある木の一部から独立した一本の木を作り出します。

取り木とは、幹や枝の成熟した一部に先に自分の根を育てさせてから親木から切り離す技術で、そうして生まれた木は、実生では同じ年数で作れない太さ・曲がり・枝ぶりを最初から備えた状態で独立の一歩を踏み出します。

幹の途中に根を強制的に出させる

木の根は普通、根元にしかありません。その上のすべての部分は、土とつながるその一点だけに頼っています。取り木は、幹や枝の途中にあえてこのつながりの「詰まり」を作ることから始まります。方法は二つあります。一つは、幹の一部の樹皮を輪状に剥ぎ取り、白い木肌を露出させて、上の葉で作られた養分が下へ流れるのを断つ方法。もう一つは、同じ場所に銅線をきつく巻きつけ、幹が太くなるにつれてその流れを少しずつ締め上げていく方法です。どちらの方法でも、本来は根へ向かうはずだった養分と成長ホルモンが、傷口のすぐ上に溜まっていきます。数週間のうちにそこにカルス(癒合組織)ができ、そこから直接新しい根が出てきます。この間、傷口には湿らせた水苔を詰め、ビニールで覆って湿度と暗さを保ちます。樹種や季節にもよりますが、水苔の中に新しい根が見えるようになるまでには、早ければ数週間、遅ければ数ヶ月かかるとされています。そこまで根が育って初めて、新しい根の塊のすぐ下で枝を切り離し、独立した一本として鉢に植えます。この二つの方法は樹種によって向き不向きがあります。黒松(kuromatsu)や五葉松(goyomatsu)といった針葉樹は、樹皮を輪状に剥ぎ取る方法より、銅線を巻く方法のほうが概して負担が少ないとされる一方、楓のような生育の旺盛な広葉樹は、より負担の大きい輪状剥皮の方法でも問題なく根付きやすいとされています。

太い幹を、育った木から借りてくる

取り木を他の繁殖方法と分けているのは、新しい木が何を受け継ぐかという点です。種から盆栽を育てる「実生(みしょう)」は、幹の太さゼロから始め、何十年もの成長を一年輪ずつ積み重ねて太らせていきます。これに対して取り木は、はるかに大きく育った木がすでに何年、何十年とかけて太らせ、曲げ、枝を分けてきた幹の一部分に、あとから根だけを与えるやり方です。畑で数年かけて育てた枝を取り木にすれば、実生なら一世代分かかる太さと動きを、最初の鉢の時点ですでに備えた状態で仕立てを始められます。新しい木は、いわば親木がすでに育て終えた木質の上に成り立っているのです。

欠点を、二本の木に変える

一本の木のすべての部分が等しく優れているとは限りません。根元近くに古い傷跡や、片寄って薄い「根張り(ねばり)」、病気、あるいは作家が望まない曲がりがある一方で、その先の幹や枝は健康で姿も整っている、ということがあります。こうした木をそのまま処分するのではなく、その欠点より上の部分で取り木をかければ、活かす価値のある部分だけをまっさらな新しい木として独立させ、問題のある根元側はそのまま切り離すか、親木として育て続けることができます。同じ考え方は、根張りの悪さを直す場合にも当てはまります。取り木で新しく出た根は傷口の周囲に比較的均等に広がる傾向があり、元の木より整った根張りになることも少なくありません。取り木は、この意味で、良い素材を増やす技術であると同時に、欠点のある木を救う技術でもあります。

わずか一つの生育期で手に入る古さ

幹や曲がり、枝ぶりが根よりも先に存在していたぶん、取り木で作られた木は、切り離されて鉢に植えられたその年から、樹齢何十年もの姿に見えることがあります。けれど、根の年数だけを厳密に数えれば、それはできたばかりの新しい木です。ここに、取り木がもっとも揺さぶってくる「樹齢」という考え方があります。木質は古く、根は若く、木全体としてはそのどちらでもありません。盆栽の「持ち込み」年数は、通常これとは別の物差しで数えられますが、取り木は、木の見た目の成熟度と、その一部分の実際の年数が、そもそも同じ物差しで測れるものではなかったことを思い出させてくれます。

この考え方が向かう先

挿し木(さしき)による繁殖と並んで、取り木は、日本の生産者が一本の木を一から育てる一生分の時間を待たずに、良い素材を増やしていくための、ごく当たり前の方法の一つです。けれどそこには、盆栽の考え方の他の部分にも通じる、小さな発想があります。木の物語は、必ずしも一つの出発点から数え始めなくてもよい、という発想です。取り木で切り出された幹は、同じ木の別の部分がすでに生きてきた年月を、そのまま先へ運んでいきます。Azukariも、繁殖ではなく所有という次元で、これと近い発想の上に成り立っています。持ち主が託される木は、たいていの場合、その持ち主自身の記録が始まるより前に、すでに何年も、時には何世代分もの年月を、日本の作家のもとで過ごしています。どちらの場合も、木の物語に途中から加わることは、決して劣った始まり方ではありません。

参考リンク

  1. Bonsai Empire — Air layering as a Bonsai cultivation technique — 銅線を巻く方法と輪状剥皮の方法、発根の生理的な仕組み、標準的な所要期間についての解説。
  2. Bonsai4Me — Layering techniques for Bonsai — 方法ごとの樹種の向き不向き、季節ごとの適期、成木の太い枝から取り木で独立させる手法についての解説。
  3. Wikipedia — Layering (horticulture) — 取り木(マーコッティング)の一般的な定義、輪状剥皮の工程、挿し木との違いについて。
  4. Texas A&M AgriLife Extension (Aggie Horticulture) — Air Layering for Difficult-to-Root Plants — 発根しにくい木本植物に古くから使われてきた取り木の手順と背景についての解説。
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