
本格的な盆栽が高いのは、その価値を作っているものが、どれも早めたり大量に作ったりできないからです。すでに生きてきた年月、季節ごとに同じ木へ戻ってくる作家の手、そして所有者と作家が一人ずつしか積み重ねられない経歴。 これは通常の意味での製造コストではありません。時間の積み重ねが、一鉢の中に目に見える形で現れているのです。
お金では買えない、時間という条件
若い木は、腕のある人が水をやり、肥料を与え、針金をかけたとしても、幹が実際の年齢より古くなるわけではありません。盆栽の作り手が*古木感(こぼくかん、"年を経た木の風合い")*と呼ぶ、あの割れた樹皮の質感は、何十年もの歳月を経て初めて生まれるもので、近道はありません。樹齢は、どんな技術でも代わりが利かない唯一の価値であると以前書きました。10年の幹と100年の幹は、同じ日に同じ手で剪定されても、その差が縮まることはありません。古い木に高い値がつくのは、その大部分が「すでに過ぎた年月」そのものへの値づけであり、その年月を若い木に後から足すことは誰にもできないからです。
毎年、作家の手が入っている
盆栽は一度形を作って放置される植物ではありません。一年の中でも休眠、春の新芽の伸び、種によっては結実や開花、そして再び休眠へと段階を移していきます。その各段階で、作家は異なる手入れを行います。晩冬の構造的な剪定、新芽が柔らかく折れにくい時期を見計らった針金かけ、成長の早い樹種なら1年、育った松なら数年に一度という植え替えの周期。一シーズンでも手を抜けば、木はただ待ってくれるわけではなく、姿が崩れ、それを直すのに何年もかかることがあります。古い盆栽の価格には、その途切れない手入れの分も含まれています。10年育った木であれば、そうした年間サイクルをおよそ10回、それぞれ水やりだけでなく訓練された手を必要としながら重ねてきたことになります。
価格を作るのは、木そのものより経歴と格
同じ樹種で大きさも近い二本の木でも、*経歴(けいれき、"誰が育て、誰が持ち続けてきたかの記録")と格(かく、"幹や樹皮、扱われてきた年月から判断される木の格式")*を見れば、値段は大きく変わります。盆栽の価値は、木の姿そのもの以上に、この経歴から読み取られます。作家と所有者をたどれる木は、見た目が同じでも経歴のわからない木とは違う値がつきます。実際に盆栽園がどのように一本ごとの数字を決めているかは「盆栽の価格はどう決まるのか」で詳しく扱っています。要点だけ言えば、参照できる公開の価格表は存在せず、訓練された目が樹齢・格・経歴・作者を一度に見極めて値をつけているということです。
安い盆栽と高い盆栽の違いはどこにあるか
ホームセンターや園芸店で売られている盆栽の多くは、海外では*mallsai(モールサイ、"量販店で売られる量産盆栽")*とも呼ばれ、比較的安価です。理由は単純で、ここまで挙げてきたことのほとんどがまだ起きていないからです。若く、大量に増やされた苗で、店を出た時点では個別の仕立てがほとんど入っていません。だからといって、そこから始めるのが悪いわけではありません。その点は別の記事で扱っています。ここで言いたいのは、その価格が反映しているのは「植物」であって、まだ年月・手・経歴を積んだ「盆栽」ではないということです。3,000円の苗木と数百万円の展示級の松との差は、単なる上乗せではありません。同じ過程の入口にいる木と、何十年、何百年もその過程を歩んできた木との、目に見える違いなのです。
高松で開かれた国際的な盆栽の集まりで、樹齢数百年と伝わる松が130万ドル前後(報道による)で取引されたという事例は、盆栽の価格が非常に高くなり得る証拠としてよく引用されます。この報道自体は事実ですが、それが表しているのは、ある一人の買い手とある一人の売り手が、ある一本の木について、ある一日に合意した金額に過ぎません。相場ではありませんし、他の樹齢数百年の松がいくらで取引されるべきかを示すものでもありません。**これは盆栽を金融商品や利益を生む手段にするものではありません。**木の価格は、一人の作家がかけてきた年月の仕事と、一人の鑑定人の訓練された目が、ある一瞬に下した評価を反映しているだけで、これから値上がりが見込まれる相場ではないのです。
突き詰めれば
数字を取り払ってみると、実際にお金が払われているのは、ごく地道な繰り返しの行為です。夜明け前に木の水を確かめる、今月切る枝と来月に残す枝を見極める、誰がいつその木を仕立てたかを記録に残す。Azukariは、その同じ仕事を目に見える形にするための仕組みです。木は日本で作家のもとに育ち続け、その季節ごとの記録は、どこに暮らしていても、その木を託された人のもとへ届きます。盆栽の価格とは、結局のところ、木の価値が問われるずっと前から、一季節ずつ積み重ねられてきたその手間の価格なのです。
参考リンク
- Bonsai Empire「Bonsai Prices」 — 盆栽の価格を左右する要素として、樹齢や幹の太り方、仕上がりの精度などを挙げている記事。
- Bonsai Empire「The Most Expensive Bonsai Tree」 — 高松の国際盆栽大会で樹齢数百年の松がおよそ130万ドルで取引されたと報じている記事。
- Bonsai Empire「Bonsai Maintenance Calendar」 — 休眠・成長・結実という木の年間サイクルと、各段階で必要となる剪定・手入れの違いについて。
- Bonsai Empire「From 'Mallsai' to Bonsai」 — 量販店で売られる量産型の低価格盆栽と、それが多くの愛好家にとって最初の一本になっていることについて。
- BonsaiQ「盆栽は本当に高いのか!?盆栽の値段の決め方」 — 日本の盆栽園の多くが、木の所有者ごとの「言い値」で価格をつけており、固定の価格表が存在しないことについて。