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ピラカンサの豊かさ

ピラカンサ(トキワサンザシ)の盆栽。白い花が満開の状態

ウィーン・ベルヴェデーレ庭園のアルペンガルテンにあるピラカンサ(Pyracantha coccinea、和名トキワサンザシ)の盆栽。ごつごつとした太い幹に、白い花房がびっしりと付いている。/ Photo by Vladaig, public domain, via Wikimedia Commons — Source

「ピラカンサ(Pyracantha)」という学名は、ギリシャ語のpyr(火)とakantha(棘)に由来します。鋭い棘を持つ木でありながら、実の色が炎のように見える――その両方の性質が、名前そのものに刻まれています。日本では単に「ピラカンサ」と呼ばれることが多いものの(学名の属名がそのまま外来語として定着したものです)、古くからの和名は「トキワサンザシ(常磐山査子)」といいます。「トキワ」は常緑を、「サンザシ」はこの木が似ている山査子を指す名前です。どちらの名で呼ばれるにせよ、この木を選ぶ理由はひとつに絞られます。

ピラカンサの盆栽は、ただひとつの目的のために育てられます。鉢の中の木としては数えるほどしかない密度で、大量の実をつけることです。

他の木にはない実つき

老爺柿のような実もの盆栽が、枝に一つ、二つとまばらに実をつけるのに対し、ピラカンサは春の終わりから初夏にかけて咲かせる花房の付き方そのままに、実も密集した房でつけます。よく手入れされた木は、11月頃には葉より実の方が多く見えるほどです。ピラカンサはバラ科の中でも、リンゴや洋ナシ、サンザシと同じ「なし状果」を実らせる仲間に属し、そこから受け継いだ性質として、白い五弁の花を一輪ずつではなく、散房花序と呼ばれる平たい花の房で咲かせます。花房の花はどれも実になる可能性を持っています。ピラカンサの実つきの評判は、つまるところこの単純な算数から来ています。4月から6月にかけてこれだけ気前よく花を咲かせる木は、日当たりと施肥という下準備さえ整えば、秋にも気前よく実をつけないわけにはいかないのです。

白い五弁の花が平たい房になって咲くピラカンサ

秋の実つきを準備する春の花。小さな白い五弁の花が、一輪ずつではなく平たい房になって咲く。/ Photo by Wilhelm Zimmerling PAR, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons — Source

鈴なりという言葉がふさわしい実

このように実が密集して垂れ下がる様子を、日本では「鈴なり」と呼びます。文字通り、鈴が連なって鳴るかのように実がびっしりと付いている状態を指す言葉です。ピラカンサは、この言葉が最もふさわしい木の一つです。品種によって、実の色は赤・オレンジ・黄色と異なります。実は植物学的には「なし状果」と呼ばれる、リンゴと同じ果実の一種で、いわゆる本当の「ベリー(液果)」ではありません。単に「ピラカンサ」と呼ぶとき、多くはトキワサンザシ(Pyracantha coccinea)を指します。ヨーロッパ南部から西アジアの原産で、濃い緋色の実をつける種です。オレンジ色の実をつける近縁種は「タチバナモドキ(橘擬き)」といい、こちらは中国南西部の原産、実の色が橘に似ていることに由来する名前です。どちらも日本の在来種ではありません。この二種を一本の木に接ぎ木したり、一つの鉢に寄せ植えしたりすれば、同じ秋に二色の「鈴なり」を見せる鉢になります。園芸店では、そうして作られた鉢植えをよく見かけます。

青空を背景に密集して熟した赤オレンジ色のピラカンサの実

熟したピラカンサの実。枝に密集し、ひとかたまりの色の塊のように見える。/ Photo by salomon10, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons — Source

丈夫で、最初の一本にも向く

ピラカンサのもう一つの評判は、実とは関係のないところにあります。この木がどれほど手のかからない木であるか、という点です。明治時代にヨーロッパ・アジアから日本へ導入されたこの木は、暑さにも寒さにも痩せた土にも強く、多くの花もの・実もの樹種にはない丈夫さを持っています。NHK「みんなの趣味の園芸」でも耐寒性・耐暑性はいずれも「強い」、栽培難易度は5段階の2と評価されています。古い枝からもよく芽を吹くため、荒れた苗木を思い切って強く切り戻しても、そこから枝ぶりを作り直せます。この性質のため、最初の実もの盆栽としてもよく勧められる木です。ただし、この木の名前そのものが示す注意点が一つあります。ピラカンサの枝には、皮膚を傷つけるほど鋭い棘が並んでいます。そのため作家は、針金かけを行う枝からはあらかじめ棘を取り除くのが一般的で、地植えでの丈夫さから想像するよりも、作業台の上では丁寧な扱いを求められる木でもあります。評判通りにたくさんの実をつけさせるために欠かせないのは日当たりです。日陰でもピラカンサは育ちますが、花も実もずっとまばらになります。加えて、春から夏にかけての安定した水やりと、葉よりも花と実を促すリン酸・カリを多めにした施肥の季節が必要です。

石付きに仕立てられたタチバナモドキの盆栽

オレンジ色の実をつけるタチバナモドキを、石付きに仕立てた盆栽。シカゴ植物園の盆栽コレクションより。/ Photo by cultivar413, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons — Source

秋を越えて残る色

ピラカンサの実は、おおむね11月頃までに色づき、多くの庭木の実と違って、熟してもすぐには落ちたり傷んだりしません。そのまま放っておけば、翌年の1月頃まで枝の上に色を保ち続けます。実の見頃が去った後も色が残り続けるからこそ、ピラカンサは秋の樹種として語られながら、実際には秋そのものより長く彩りを保つ木になっています。周囲の楓など本当の紅葉樹に比べれば、ゆっくりと燃え続ける色です。この木が常緑であることも、その効果を際立たせます。実の色を奪い合う相手になる落葉がなく、濃い緑のつやのある葉を背景に実の色が映えるのです。落葉する実もの盆栽が真冬にむき出しの枝を見せるのとは違います。ただし、実が長く残るということは、冬場の鳥にとって貴重な食料が長く残るということでもあります。展示会まで実の姿を保ちたい作家は、目当ての木を鳥かごなどで覆い、鳥に先を越されないようにします。とはいえ、いつまでも付けておくものでもありません。遅くとも年が明けたら、残った実は摘み取るのがよいとされています。

偶然ではない

ピラカンサがこれほどの実をつけるのは、偶然ではありません。花房は手のかかる春の間、水と肥料を欠かさず与えられ、棘のある枝は都合よりも丁寧さを優先して仕立てられ、色づいた実は、それを食べたがるほとんど全ての生き物から、時には守られながら見守られています。松の幹づくりや楓の枝づくりに比べれば地味な作業かもしれませんが、木を育てる限り毎年繰り返される、それ自体の厳しさを持つ仕事です。

Azukariは、こうした季節ごとの仕事を、木とその持ち主の間の距離を越えて届けるための仕組みです。日本にいる作家は、ピラカンサが最も手を必要とする季節を通じて、開花と施肥、そして実つきの世話を続け、その年どれだけ鈴なりになったか、色がどれだけ長く残ったかを、季節の記録として持ち主に届けます。11月に鉢の前に立たなくても、その年木が約束を守ったかどうかを知ることができます。

参考リンク

  1. Wikipedia「Pyracantha」 — 属の概要。6種、バラ科(ナシ連)、原産地は南東ヨーロッパとアジア、「火」と「棘」を意味するギリシャ語に由来する名前、皮膚を貫くほどの棘、小さな白い5数性の花、赤・オレンジ・黄色に熟し冬まで残って鳥の食料になるなし状果について。
  2. Bonsai Empire「Firethorn (Pyracantha)」 — 盆栽としての管理方法。実つきに必要な日照、リン酸・カリを重視した施肥、針金かけ前の棘の除去、強剪定への耐性、火傷病などの病害について。
  3. NHK「みんなの趣味の園芸」ピラカンサ — 明治時代の日本への導入、5〜6月の開花期、栽培難易度の低さ、暑さ・寒さへの耐性について。
  4. Wikipedia「トキワサンザシ属」 — バラ科ナシ亜科という分類、日本で栽培される3種の原産地(トキワサンザシ=ヨーロッパ南部〜西アジア、タチバナモドキ=中国南西部、カザンデマリ=ヒマラヤ地方。いずれも日本在来ではない)、4〜5月の開花と11月の結実・翌年1月まで残る実、タチバナモドキの散房花序、「ピラカンサ」「トキワサンザシ」という呼び名の使い分けについて。
  5. キミのミニ盆栽びより「ピラカンサの魅力」 — 赤実種と黄橙実種を寄せ植え・接ぎ木で一鉢にまとめた鉢植えが園芸店で売られていること、鑑賞用の実を鳥かごなどでカバーして守ること、遅くとも年明けには摘果するという管理について。
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