
正しいタイミングで少し我慢させた木は、こういう姿になります。間延びした柔らかい伸びではなく、密に詰まった葉。
鉢の中で育つ盆栽は、地植えの木のように、毎年少しずつ根をどこまでも伸ばして自分で養分を探しに行くことができません。木が受け取る養分は、すべて作家が鉢の中に置いたものです。この一点だけを見ると、肥料はたっぷり与えるべきもののように思えてきます。この記事の答えは、その直感とは逆のところにあります。
肥料は多く与えれば良い盆栽になるわけではなく、木が本当に必要とする量を超えた分は、むしろ姿を崩していきます。hiryo(肥料、"fertilizer")という技術の本質は、与えることと同じくらい、控えることのなかにあります。
与えすぎがなぜ樹形を崩すのか
長く肥料を与えなければ、鉢の中の木はやがて痩せ、成長も止まってしまいます。しかし逆に、与えすぎた木には、一見わかりにくいけれど樹形にとって同じくらい深刻な問題が起こります。徒長した柔らかい枝と、大きくなりすぎた葉です。葉や地上部の成長をもっとも強く後押しする窒素が過剰になると、枝はまだ止まる理由もないうちに伸び続けてしまうのです。そうして生まれる余分な成長は、洗練された成長ではありません。ただの量にすぎず、その量こそ、何年もの芽摘みや剪定が木から取り除こうとしているものです。さらに度を越すと、与えすぎはより直接的な害にもつながります。肥料に含まれる塩分は、日々の水やりで流れ出る速さよりも早く土の中に蓄積し、もともと限られた量の土しか持たない根が傷んで、葉が茶色くなったり落ちたりすることもあります。枝葉の詰まった小づくりな木を目指す作家は、事実上、与えることと同じ頻度で、与えないことも選んでいるのです。
花や実のための施肥設計
肥料はひとつの働きしか持たない一様な物質ではありません。袋に「N-P-K」の比率で表示される三つの主要な養分のうち、窒素は葉や枝の成長を、リン酸は根の発達と花・実の形成を、カリウムは木の全体的な健康と丈夫さを支えます。主に姿を見せるために育てられる松や真柏であれば、生育期を通じてほぼ均等な配合の肥料で問題ありません。しかし花や実を目的に育てられる木は、配合も、与える時期も異なります。とくに花芽が形成される時期には、窒素をあえて控えます。窒素が多すぎると、木のエネルギーが枝葉の成長へと向かってしまい、本来そこに向くべき木質の充実や花芽の形成が後回しになるからです。代わりにリン酸とカリウムを増やし、目当ての花や実を支えます。日本の花もの・実もの専門の盆栽園では、aburakasu(油かす、"rapeseed cake")に骨粉を混ぜた有機肥料を基本とし、その配合比を調整することで、実ものの品種にはとくに、通常の雑木にはまず必要のないほど高い割合のリン酸とカリウムを持たせています。
時期と量の見極め
hiryo は暦全体ではなく、生育期のリズムに合わせて与えます。土の表面に置いて、水やりのたびに少しずつ溶け出す固形の有機肥料はおよそ4〜6週間ごとに置き換え、薄めた液肥を使う場合はもう少し短く、1〜2週間ごとが目安です。そしてどちらも、木が受け取っても活かせない時期には、量を減らすのではなく、はっきりと止めます。植え替え直後で切った根がまだ癒えていない木は、1ヶ月以上肥料を控えるのが一般的です。傷んだ根に肥料を与えても、良い結果にはならないからです。大きく剪定した直後の木も同じように扱われます。真夏の高温多湿の時期も、成長そのものが鈍り、使われなかった養分がそのまま土に残ってしまうため、肥料を控えるか止めます。そして木が休眠に向かうころには、そもそも活発な成長がなくなるため、また肥料を止めます。これらの「休み」は、施肥スケジュールの例外ではありません。それ自体がスケジュールなのです。
我慢させることも、育てることのうち
この三つを合わせると、もうひとつ、静かな四つ目の原則が見えてきます。盆栽では、木に肥料を与えないという判断も、与えるという判断と同じくらい真剣に扱われるということです。正しいタイミングで少し我慢させられた木は、無節操に肥料を与えられた木よりも、小さな葉と詰まった節間、細かい枝ぶりを持つようになります。これは、何年もの芽摘みや剪定が目指してきたのと同じ小づくりさに、木が技術的に使いきれる量より少しだけ控えることで到達する道です。これは放置ではありません。木がもう十分かどうかを見極めることは、もっと必要かどうかを見極めることと同じだけの注意を要する判断です。そしてそれは、毎日の水やりや、数年ごとに繰り返される根まわりの土の更新と並んで、ありふれた繰り返しの作業のなかにこそ、盆栽の技術の大部分が宿っていることを示すもうひとつの例です。
Azukariでも、この季節ごとの見極めのもとで、日本の作家が一本一本の木に肥料を与えています。木が受け取れるだけ与えるのではなく、木が本当に必要とする分だけを、必要なタイミングで。
参考リンク
- Bonsai Empire「Fertilizing Bonsai」 — 窒素・リン酸・カリウムそれぞれの働き、与えすぎによる徒長と葉の肥大化、塩分蓄積と根の傷み、冬の休眠期に施肥を止めることについて。
- Bonsai4Me「Fertilising Your Bonsai / Bonsai Feeds」 — 生育期後半に窒素の多い肥料を避けて徒長を防ぐこと、植え替え直後の木を少なくとも6週間は肥料を与えずに置くことについて。
- 盆栽妙「盆栽に肥料が及ぼす7つの影響」 — 与えすぎによる徒長枝や葉の肥大化、肥料を控えるべき時期(梅雨・花芽分化期・植え替え直後)、花ものと実もので異なる油かすと骨粉の配合比について。
- キミのミニ盆栽びより「盆栽の肥料」 — 固形肥料と液体肥料の違い、春は控えめ・秋はしっかりという施肥のリズム、真夏や植え替え後およそ1ヶ月の間、肥料を控えることについて。