
五葉松(Pinus parviflora) アメリカ・ノースカロライナ樹木園にて。/ Photo by David J. Stang, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons — Source
よく仕立てられた松の前に立ったら、幹や枝を通り過ぎて、葉そのものに目を向けてみてください。そこで読み取れるのが「葉性(はしょう)」です。葉の大きさ、密度、色といった、その木の葉が生まれ持った性質のことで、剪定などの技術で多少の調整はできても、もともと備わっていないものを作り出すことはできない性質です。
木の葉性は、盆栽の作家が選ぶことはできても、作り出すことはほとんどできない、数少ない性質のひとつです。
葉性とは何か
盆栽の世界で「葉性」という言葉は、葉の大きさだけを指すものではありません。作家たちはこの言葉を、葉の形や色、さらには育ち方そのものにまで使います。葉がどれだけ密に付くか、節と節の間がどれだけ短いか、一年を通してどれだけ鮮やかな緑を保つか。この言葉は、剪定したあとに芽がどれだけ素直に吹き直すかという性質とも重なり合っており、「葉性がよくて作りやすい木」と言うとき、多くの場合、美しい葉と、作家の思い通りに応えてくれる芽吹きの両方が褒められています。
同じ樹種でも、一本ごとに違う
同じ実生の親から採れた種でも、育った黒松の葉が、一本は密で細く、もう一本は長く粗い、ということが起こります。葉性は樹種全体のルールというより、一本一本の木の個性に近い性質だからです。挿し木や接ぎ木で一本の親木から増やされた木を除けば、その葉は「指紋のように一本一本違う」と、ある英語圏の盆栽解説書は表現しています。だからこそ、苗木や山採り、実生から仕立てる盆栽の素材は、樹種名だけで判断されず、一枚一枚の葉で吟味されます。同じ「五葉松」という名前でも、数センチある太く粗い葉を持つ木もあれば、その何分の一かの葉を持つ木もあるのです。五葉松という樹種そのものについては、別の記事でも詳しく取り上げています。
良い葉性とは何か
良いとされる基準は、樹種のカテゴリーによって異なります。針葉樹では、短く、まっすぐで、色彩が鮮やかで、それでいてある程度太さのある葉が、密な房となって付いているものが好まれます。上の写真の松に近い姿です。雑木では、小さく光沢のある葉で、色が鮮やかで、紅葉や芽出しの色が美しいものが好まれます。松の中でもっとも分かりやすい例が、五葉松の矮性品種「瑞祥(ずいしょう)」です。葉の長さは普通の五葉松のおよそ3分の1ほどしかなく、密に詰まり、わずかに銀色を帯びた色合いをしています。現在栽培されている瑞祥はすべて、昭和初期に日本で見つかった一本の突然変異の木にたどり着くと伝えられており、挿し木や接ぎ木によって受け継がれてきました。この葉性は、一本の木の中でたった一度見出され、以来ずっと増やされ続けてきたものであり、仕立ての技術によって一般の木から作り出されたものではないという証拠でもあります。
仕立てでは作り出せない性質
この最後の点は、見た目以上に重要です。季節ごとの技術は、葉をある程度までなら調整できます。たとえば黒松や赤松では、初夏に新しく伸びた芽(みどり)を摘み取ることで、その年に吹き直す二番芽の葉を短く、細かくすることができますし、肥料を控えることで葉が粗くなるのを抑えることもできます。けれど、これらはあくまで小幅な調整であり、木の根本にある性質そのものを書き換えるものではありません。何十年手をかけても、普通の葉性の五葉松が瑞祥になることはありません。幹を針金で新しい形に曲げたり、切った枝をまた芽吹かせたりするのとは違い、作家が粗い葉性を細やかな葉性へと仕立て直すことはできないのです。だからこそ葉性は、木が実生の段階を過ぎたあとは、ほぼ固定された性質として扱われます。確実に細やかな葉を求める作家が、出来の悪い木を訓練で改善しようとするのではなく、実績のある個体を挿し木や接ぎ木で増やそうとするのも、そのためです。
プロが最初に見る場所
葉性は後から手直しがきかないからこそ、仕立て前の素材を見極めるとき、作家やバイヤーが最初に確認する項目のひとつになります。多くの場合、幹の動きや枝の配置よりも先に見られます。幹の不自然な曲がりは、何年もかけた針金かけと剪定、芽吹きの積み重ねで直すことができますが、葉性の悪さは、一般に直すことができません。盆栽を見るときの、正面や根張り、舎利の読み方は、鑑賞を学ぶひとつの入口ですが、葉性を見る目を養うことは、それよりも静かで、もっと手前にある、素材そのものを選ぶ段階の話です。
結び
こうしたことは、写真ではなかなか伝わりません。葉性を見るというのは、じっくりと近づいて見る類の作業です。若い松の並ぶ棚の前に立ったり、一本の木の新芽が一つの季節をかけて固まっていく様子を見届けたりすることで、はじめて分かるものであり、画面越しに眺めるだけでは見えてきません。
Azukariは、木の持ち主が変わったあとも、この近い距離での観察を絶やしません。日本の作家は、どの生産者もそうするように、木の葉をずっと見続けています。新しい芽がどのように吹き、それが細やかに固まったか、粗く固まったか。そうした観察を、季節ごとの記録として持ち主に届けます。五葉松の葉性は、発芽したその日、あるいは接ぎ木をされたその日にすでに決まっています。作家が続ける手入れにできることは、その木に、その木の葉には元々備わっていなかった何かを求めないようにすることだけです。
参考リンク
- 近代出版「調べてみよう盆栽用語集」はしょう【葉性】 — 葉性の定義と、針葉樹・雑木それぞれにおける良い葉性の条件についての用語解説。
- Bonsai Harmony「Hasho, happa and How to Choose a Good Leaf Type」 — 葉性を「指紋のように一本一本違う」と説明する英語の解説記事。仕立てによる改善が一般に難しいこと、二季咲きの松における芽摘みでの葉の大きさ調整についても触れている。
- 日本瑞祥愛好会「瑞祥とは」 — 五葉松の品種「瑞祥」の由来。昭和期以来、一本の祖木から挿し木・接ぎ木・取り木によって受け継がれてきた経歴について。
- KIDORI 用語辞典「五葉松(ゴヨウマツ)瑞祥」 — 瑞祥の葉の長さ(普通の五葉松のおよそ3分の1)、密度、銀色を帯びた色合いについての解説。
- Wikimedia Commons — File: Pinus parviflora 9zz.jpg — 冒頭画像の出典とライセンス(CC BY-SA 4.0、撮影: David J. Stang)。