
黒松。より繊細な葉を接ぐための台木として使われる代表的な樹種 / Photo: Azukari
盆栽で最も説得力のある枝が、その木自身が伸ばした枝とは限りません。幹は作家の望む方向に太り、何十年もの剪定によって整えられていきますが、木は必ずしも設計図が求めるとおりの場所に芽を出してくれるわけではありません。裏側に空いた穴を埋めたい、一の枝がもっと低い位置に欲しい、木全体の完成度に対して葉が粗すぎる。そうした問題を直接解決する技術が「接ぎ木(つぎき)」です。一本の木から生きた枝や芽を取り、別の木に永久に接ぎ合わせる技術です。
接ぎ木とは、設計図が求める位置に、枝そのもの、あるいは葉の質までも思いどおりに作り出す技術です。そのあとの数年をかけて、接いだ跡が誰にも分からなくなるまで仕上げていきます。
望みの位置に作る枝
10年かけて育ててきた幹にも、設計図が必要とする枝がちょうど欠けている、ということが起こります。枝ぶりの読み方を知るということは、木が本来従うべき枝の順序――低い位置に横へ伸びる一の枝、それに応える二の枝、奥行きを加える控え枝――を見抜くということですが、放っておいた木がその通りの位置に枝を用意してくれるとは限りません。ある黒松を長年育ててきた作家は、この問題を率直に語っています。何年も育成を重ねても、最終的な高さまで詰める前に「あと数本の枝」がどうしても足りない、というのです。芽が望みの場所に出るのを何年も待つのではなく、あるいは木が偶然差し出すものだけで妥協するのでもなく、作家は設計図が求める位置に、直接、枝を幹に接ぎます。
別の木の枝を幹に接ぐ
こうして加える材料を「穂木(ほぎ)」、それを受け入れる木を「台木(だいぎ)」と呼びます。最も伝統的な方法は「切り接ぎ」です。健康な若い枝を母木から切り取り、その付け根をくさび形に削り、枝や幹の必要な位置に合わせて切り込んだ切り口へはめ込みます。このとき、穂木の樹皮のすぐ内側にある薄緑色の形成層が、台木の形成層と正確に重なるようにします。挿し木や切り接ぎでは活着しにくい樹種――もみじなどがその代表です――には、代わりに「呼び接ぎ」が使われます。穂木となる枝を母木から切り離さず、生きたまま鉢ごと接ぎたい木のそばに置き、接触する部分を固定してつなぎ、活着したのを確認してから初めて母木から切り離します。
松柏の盆栽で繰り返し見られる組み合わせは、黒松を台木にし、五葉松の穂木を接ぐというものです。黒松の力強く病気に強い根と太い幹が木全体の構造を支え、接がれた五葉松がその樹種ならではの、締まった五葉の葉性を添えます。真柏を扱う作家も同様の手法を使います。細やかな鱗状の葉を持つ「糸魚川」という品種の葉を、サンノゼやプロストラータなど、より丈夫な台木に接ぐことで、大きく曲がった幹や、風雪に耐えた古い舎利を持つ木に、もとの葉よりはるかに洗練された葉をまとわせることができます。
時間が消し去るはずの継ぎ目
よくできた接ぎ木の基準は、活着することそのものではありません。数年のうちに、線も膨らみもなく、二本の木が接がれたという事実そのものが読み取れなくなること、それが基準です。その結果は、外からはほとんど見えない精密さに支えられています。穂木は、その形成層が台木の形成層と正確に重なるように切り、多くの場合、その年の芽がふくらむ前の晩冬に接ぎます。暖かい日には樹液が動きすぎて、組織が触れ合う前に切り口を満たしてしまうからです。接いだ部分はテープや、湿らせた水苔を詰めた袋などで覆われ、新しい組織が両側をつなぐまでの間、湿度を保ちます。この覆いは一年以上そのままにされることも珍しくありません。正しく行えば、接ぎ木の跡はやがてほとんど見えなくなると、作家たちは語ります。真柏の接ぎ木で記録されている複数年にわたる経過――接いだ葉が十分に育ってから、もとの枝を一本ずつ切り落としていく過程――は、その消え方がいかに段階的で慎重なものかを物語っています。
まだ存在しない木から逆算する仕事
こうした作業は、あらかじめ計画がなければ成り立ちません。接ぎ木に手を伸ばす作家は、たいてい木の完成した姿――枝がどこに収まり、葉がどう見えるか――を、木が実際にその姿になる何年も、時には何十年も前から思い描いています。接ぎ木は、通常の一年の生育では間に合わない材料を補える、数少ない技術のひとつです。針金かけや強い剪定と並んで、自然の時間割が作家の計画に追いつかないときにこそ使われる手段です。木が自然に差し出すものをそのまま受け入れるのではなく、接ぎ木という判断は、まだ存在しない完成形から逆算し、そこに至るために何を手で足す必要があるかを決める仕事です。
結び
接ぎ木が盆栽の技術の中で際立っているのは、その仕事がほとんど評価されないように作られている点です。針金をかけた枝には、その曲げの跡が残ります。剪定した幹には、その結果としての先細りが残ります。けれど、うまくいった接ぎ木は、何も残さないことを目指します。タイミングを合わせ、湿度に気を配り、辛抱強く待った年月は、見る者がその跡を見つけられないという事実によってしか、その存在を示しません。これは静かな一つの基準であり、Azukariの仕組みにも通じるものです。Azukariが預かる木々は、日本で作家の手による手入れを季節ごとに受け続けており、接ぎ木のような技術的な作業も、その記録の一部として残されます。たとえ、よくできた接ぎ木そのものは、二度と目に見える形では現れないとしても。
盆栽の構造がどのように作られていくかについては、「枝ぶりの読み方」、「針金かけという対話」、「取り木という時間の短縮」もあわせてお読みください。
参考リンク
- Bonsai Empire「盆栽の育成技術としての接ぎ木」 — 枝接ぎ・呼び接ぎ・通し接ぎの各手法、手法ごとの適期、形成層を合わせる必要性、樹種間の相性、接ぎ木の跡がやがて見えなくなることについて。
- Bonsai Tonight「黒松の幹への接ぎ木」 — 黒松の幹の特定の位置へ枝を接ぐ作業、穂木の準備、形成層の位置合わせ、寒い時期に行う理由について。
- Bonsai Tonight「接ぎ木から作る真柏、四年間の経過」 — プロストラータを台木に糸魚川真柏の葉を接ぐ作業と、もとの枝を数年かけて段階的に取り除いていく過程について。
- Bonsai Kreativ「松の接ぎ木(日本語で接ぎ木)— Josef Burschl氏による手順解説」 — 穂木の準備、くさび形の切り込み、形成層の位置合わせ、テープとパラフィルムによる保護について。
- 盆栽妙 本店「接ぎ木」 — 枝接ぎ・根接ぎ・呼び接ぎなど、盆栽で使われる接ぎ木の種類とその用途についての用語解説。