日本語EN
AZUKARI

藤を鉢に垂らす

紫の花房を長く垂らして咲く、藤の盆栽

藤の盆栽は、一年のほとんどを何の変哲もないつる木として過ごし、春先の数週間だけ、水のように垂れる花房を見せます。懸崖という樹形は、まさにその仕草を受け止めるために存在しています。

(ふじ、"wisteria")は、何より先につる植物です。放っておけば手の届くところどこへでも伸び上がり、年を追うごとに、庭木のつるというより古木を思わせるほど硬く逞しい幹に育っていきます。盆栽として仕立てるとは、その旺盛さと絶えず折り合いをつけることです。針金をかけ、切り戻し、抑え込む。見る人の前に最終的に現れるのは、木が本来望む上へ上へという性質ではなく、多くの場合、下へと向かう、選び取られた姿です。

水のように垂れる花房

藤の花房、マメ科特有の房状に垂れる花の連なりこそ、この樹種が育てられる理由そのものです。日本の盆栽で最もよく仕立てられる Wisteria floribunda(ノダフジ)では、一つの花房が基部から先端へと、一度にではなくおよそ一〜二週間かけて順に開いていくとされ、上部の花がすでに盛りを過ぎた頃にも下側はまだ咲き伸びている、という緩やかな連続の開花になります。庭植えで選抜された長花房の品種は驚くほどの長さが報告されており、なかでも「九尺藤」と呼ばれる品種は、約2メートル近くに達したと伝わります。盆栽の花房がその規模に届くことはありませんが、育て手が小さな鉢の中で見せようとしているのは同じ、下へ、伸びながら垂れていくという性質です。差し出された花ではなく、いままさに落ちつつある花を見せようとしています。

なぜ懸崖という樹形がこれほど合うのか

多くの盆栽の樹形は、樹種にいくらか不自然なことを求めます。楓を直幹の厳格さに従わせたり、松を静けさへと鎮めたりするように。藤を懸崖、つまりカスケードの樹形に仕立てることは、矯正というより合意に近い作業です。つる自体がすでに垂れたがっているからです。懸崖という樹形の文法、幹を少しだけ立ち上げたあと下へと落としていき、鉢のふちを、時には木を乗せた卓さえも越えていくという構成は、こうした性質の木のためにこそ形づくられたと言ってもいいでしょう。懸崖に仕立てた藤が加えるのは、その上にもう一つの落下を重ねることです。幹が垂れ、その幹から今度は花房が垂れる。二つの動きが一つの下向きの仕草として重なって見え、単に飾りをぶら下げただけの木にはならないのです。育て手の多くは今も、垂れ落ちる姿の視覚的な重みを支えるため、深く背の高い鉢を選びます。そして幹そのものにも、花だけを見ていては気づきにくいほどの太い針金と、こまめな手入れが要ります。これほど旺盛なつるは、放っておけば一シーズンのうちに、せっかく仕立てた形からまた上へと這い出してしまうからです。

花の裏にある我慢

藤の盆栽が花をつけるのは、そうするよう説き伏せられたときだけであり、その説得は、この植物自身の化学に逆らって進められます。藤は根に共生する細菌の働きで空気中の窒素を自ら取り込むため、育て手が窒素分の多い肥料をどれだけ控えても、木自身がすでに、葉や茎を茂らせようとする欲求を「自給」してしまっているのです。育て手はこれに対して、窒素を抑えリン酸を効かせた肥料を選び、鉢はあえて根詰まり気味の状態を保ち、開花後には新しく伸びた枝を、多くの場合二、三枚の葉を残す程度まで思い切って切り戻します。こうすることで、木のエネルギーを今年の伸長ではなく、来年の花芽の方へと振り向けるのです。どれも一朝一夕には進みません。若い挿し木から育てた藤が、ある程度確実に花をつけるようになるまでには五年から十年ほどの我慢が要るとされ、つまりある春に育て手が手を入れている木は、たいてい、その春の花のためではなく、何年か先の花のために形づくられていることになります。

ほとんどの時期を人目から離れて過ごす木

開花の期間を除く残り十一か月ほど、藤の盆栽は正直なところ地味なものです。羽状の葉をつけた、何の変哲もない木質のつる。育て手が毎日目を配るべき対象ではあっても、飾り棚に据えるような姿ではありません。花房が開く春のわずか数週間のためにその場所を得るのであり、育て手のあいだでは古くから、花をつけた木だけをその期間だけ棚場から表に出し、終われば他の木々とともに育成の列へ戻す、という扱いが続けられてきました。この抑制自体が鑑賞の一部です。一年中いつでも花を見られる状態に保たれた盆栽では、かえってその価値が損なわれてしまう。展示の短さこそが、その一瞬に重みを与えているからです。これは、日本各地の庭園に見られる光景をより小さくしたものだと言えます。神社や公園の藤棚がひと月だけ人を集め、それが過ぎればただの緑陰に戻っていくのと同じ構図が、一つの鉢の中に、一人の育て手のもとで、凝縮されているのです。

結び

藤の盆栽は、一年のほとんどを、長くは続かない何かのための準備に費やすことを育て手に求め、それが終われば翌年もまた同じ準備を繰り返すことを求めます。Azukariは、まさにそうした急がない時間の流れの中にある木のための仕組みです。静かな月日を日本の作家のもとで見守られながら過ごし、持ち主の記録が、もとより長く留まるようにはできていない花を軸に組まれた時間の一区間に加わっていきます。

藤の垂れる性質を受け止めるために生まれた樹形については「懸崖という挑戦」を、日本の他の花もの盆栽の中での藤の位置づけについては「花もの盆栽とは何か」をあわせてお読みください。花もの盆栽が求める季節ごとの手入れについては、水やりの記事もご参照ください。

参考リンク

  1. Wisteria floribunda — Wikipedia — ノダフジの日本での自生、時計回りに巻きつく性質、選抜品種で最大約2メートルに達する花房の長さ、春先から春半ばにかけての開花期について。
  2. Bonsai Empire — Wisteria Bonsai Care Guide — 剪定の時期(早春または開花後の強剪定、新梢を葉2〜3枚程度まで切り戻す)、藤が自ら窒素を固定するため過剰な窒素が開花を妨げるリスク、根詰まり気味のほうが花つきが良いという点について。
  3. Bonsai Mirai — Wisteria Bonsai — リン酸を重視し窒素を抑えた施肥による開花促進、芽吹き前の早春に2〜3年ごとに行う植え替え、樹齢7〜10年ほどの成木でより安定して開花するという観察について。
  4. あしかがフラワーパーク「The Great Wisteria Festival」 — 日本を代表する藤の名所の一つにおける、季節限定・数週間にわたる藤の見頃について。
  5. Root & Bonsai — Cascade Style Guide — 藤が懸崖樹形に適した樹種であること、また懸崖仕立てを飾る際の鉢の深さや卓の高さの慣例について。
盆栽藤の盆栽懸崖花もの盆栽Azukari