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あなたの街の盆栽園

盆栽園の値打ちは、示せる具体性で決まる

1976年、米国建国200周年を記念して、日本盆栽協会は53点の盆栽と7点の水石を米国へ贈った。当時「平和のための緑の使節」と呼ばれたこの贈呈が、ワシントンD.C.近郊にある一つの美術館の土台になっている。世界には盆栽だけを専門に扱う美術館や、本格的な盆栽・盆景(bonkei、盆に景色を作る中国由来の伝統)コレクションを持つ植物園が、ミラノ近郊からアメリカ太平洋岸北西部、モントリオールまで各地に存在する。

旅先で立ち寄る価値がある盆栽園と、名前だけが立派な施設を分けるのは、開館年・贈呈の記録・収蔵点数といった、具体的に示せる事実の有無である。 この記事では、事実を確認できた主要な盆栽園を地域別に紹介し、最後に自分の街の近くで盆栽に出会う探し方をまとめる。

北米の盆栽園には、それぞれ固有の設立の経緯がある

米国の首都ワシントンD.C.の米国国立樹木園(U.S. National Arboretum)内には、国立盆栽盆景博物館(National Bonsai & Penjing Museum)がある。先述の1976年の贈呈を土台にして生まれた施設である。隣接する中国コレクションの一部は、1972年のニクソン大統領訪中後に贈られた盆景にまで遡る。その後、北米作家の作品も加わり、現在は300点超が3つのパビリオンと特別展示ギャラリーで入れ替わり展示される。入館は無料。(出典 National Bonsai Foundation、U.S. National Arboretum)

米国国立盆栽盆景博物館の入口に置かれた盆栽と館名を刻んだ石壁

Photo by Sarah Stierch, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons — 出典

米国国立盆栽盆景博物館の展示ホールに並ぶ複数の盆栽

Photo by Sarah Stierch, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons — 出典

西海岸にも、独自の成り立ちを持つ盆栽専門の美術館がある。ワシントン州フェデラルウェイの太平洋盆栽美術館(Pacific Bonsai Museum)は、林業企業ウェイヤーハウザー社とワシントン州の記念事業の連携から生まれ、1989年に開館した。世界でも数少ない盆栽専門の公立美術館の一つで、屋外の遊歩道沿いに100点以上の盆栽が並ぶ。入館は寄付制。(出典 Pacific Bonsai Museum)

太平洋盆栽美術館の屋外展示台に並ぶ盆栽

Photo by Sgerbic, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons — 出典

カナダのモントリオール植物園(Montreal Botanical Garden)も、自らの数字を示せる施設である。5つの異なるコレクションを合わせて350点を超える木を収蔵し、中には17世紀まで遡る木もある。中国南部・北部それぞれの盆景の多くは機関間の贈呈によって収蔵されたもので、日本庭園・中国庭園・展示温室と、館内各所で季節ごとに入れ替え展示される。(出典 Espace pour la vie(モントリオール植物園公式サイト))

ヨーロッパの盆栽園は、樹齢と点数で自らを示す

ヨーロッパでは、イタリア・ミラノ近郊のパラビアーゴにあるクレスピ盆栽美術館(Crespi Bonsai Museum)が代表格である。1991年開館の、世界初の常設盆栽美術館とされる。約200点の作品を季節に応じて入れ替え展示する。中でも樹齢1000年とされるガジュマルの大型盆栽は、10年を超える交渉の末に1986年に中国からイタリアへ渡った一鉢である。(出典 Crespi Bonsai)

クレスピ盆栽美術館で展示された芽吹き前の紅葉の盆栽

Photo by Ivan Stesso, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons — 出典

ドイツでは、ハイデルベルク近郊の盆栽展示施設ボンサイ・ツェントルム・ハイデルベルク(Bonsai-Zentrum Heidelberg)が知られている。ガラス張りの展示スペースと屋外庭園を合わせ約80から100点を展示し、入場は無料。(出典 Bonsai-Zentrum Heidelberg)

裏付けが取れない施設は、あえてこの記事に載せていない

北米・ヨーロッパ以外にも盆栽コレクションを持つ施設は各地にあるが、この記事では名称・所在地・特徴を確実に裏付けられた施設だけを紹介する方針を取っている。それ以外の地域については、後述する植物園・盆栽クラブの探し方を参考にしてほしい。

日本の盆栽園は、より長い記録を持つ

盆栽の本場である日本には、さらに厚みのあるコレクションと展示がある。埼玉県さいたま市の大宮盆栽美術館は、盆栽文化を発信する世界初の公立盆栽美術館として2010年に開館し、名品に加え関連の美術品や歴史・民俗資料も展示する。

1934年から続く日本最古の盆栽展「国風盆栽展(Kokufu Bonsai Ten)」は、上に挙げたどの施設よりも古くから続いており、毎年2月に東京都美術館で開催される。100回の節目は、100年続く国風盆栽展潜入レポートにまとめている。都心の明治神宮でも盆栽水石(水石、自然の姿を生かして鑑賞する石)展が開かれており、その様子は明治神宮の盆栽水石展の記事で紹介している。

この記事が拾いきれない範囲は、クラブディレクトリで見つかる

紹介した施設以外にも、盆栽コレクションを持つ植物園や地域の盆栽クラブは世界中に数多く存在する。まず、お住まいの地域の主要な植物園の公式サイトを確認してみてほしい。盆栽・盆景を常設、または季節限定で展示する植物園は少なくない。

次に、地域クラブや協会のディレクトリを活用する方法がある。北米ではAmerican Bonsai Society(ABS)とBonsai Clubs International(BCI)が、地域ごとのクラブを検索できるディレクトリを公開している。クラブに参加すれば、会員の盆栽を間近で見る機会や展示会の情報を得やすくなる。

街なかで盆栽と出会う機会は、展示施設だけとは限らない。Azukariのパートナー作家・佐伯和希は、盆栽を展示会の外、街のカフェやリゾート施設へと持ち出す活動を続けている。その様子はAzukariの作家は、街に出ているという記事で紹介している。

この記事に載った施設は、どれも何かを具体的に示せる

国立盆栽盆景博物館は1976年と53点という数字を示せる。クレスピ盆栽美術館は樹齢1000年を超えるガジュマルを示せる。国風盆栽展は1934年を示せる。あなたの街の近くにある施設が、雰囲気しか語れず、年号も点数も示せないとしても、それだけで劣っているとは限らない。ただ、同じだけの信頼はまだ得ていないということである。足を運ぶ前に公式サイトで開館年や収蔵点数を確認する姿勢は、Azukariが一本の樹に対して取っている姿勢と同じである。雰囲気ではなく、誰がいつ手入れをしているかという記録を残すこと。

Azukariで盆栽を見る

よくある質問

日本以外で盆栽を見られる場所はあるか。ある。米国の国立盆栽盆景博物館と太平洋盆栽美術館、カナダのモントリオール植物園、イタリアのクレスピ盆栽美術館、ドイツのボンサイ・ツェントルム・ハイデルベルクなど、各国に専門施設がある。入館は無料か。施設による。国立盆栽盆景博物館とハイデルベルクは無料、太平洋盆栽美術館は寄付制である。最新の料金は各施設の公式サイトで確認したい。近くに盆栽園がない場合はどうすればよいか。地域の植物園を調べるほか、ABSやBCIのクラブディレクトリから地域の盆栽クラブを探す方法がある。

参考リンク

  1. 国立盆栽盆景博物館(米国国立樹木園) — 博物館が置かれているワシントンD.C.の米国国立樹木園の公式ページ。
  2. National Bonsai Foundation「The Museum」 — 1976年、日本盆栽協会による53点の盆栽と7点の水石の贈呈、「平和のための緑の使節」という位置づけ、3つのパビリオンと2つの活動施設という構成を確認できる。
  3. Pacific Bonsai Museum — 501(c)(3)非営利団体として、寄付制で年間を通じ週6日開館していることを確認できる。
  4. Espace pour la vie(モントリオール植物園)盆栽・盆景コレクション — モントリオール植物園公式の盆栽・盆景コレクション紹介ページ。
  5. Crespi Bonsai Museum — 1991年に世界初の常設盆栽美術館として開館したこと、約200点を入れ替え展示していること、1986年にイタリアへ渡ったガジュマルが代表作であることを確認できる。
  6. Bonsai-Zentrum Heidelberg — 盆栽・錦鯉・水石を軸にした施設で、ワークショップやイベントを行っていることを確認できる。
  7. 大宮盆栽美術館 — さいたま市営の美術館で、大宮盆栽村に所在すること、樹齢1000年とされるエゾマツ「轟」などの名品を収蔵していることを確認できる。
  8. American Bonsai Society クラブディレクトリ — 米国内のクラブを州ごとに集めたディレクトリで、活動時間や連絡先を掲載している。
  9. Bonsai Clubs International クラブディレクトリ — 世界35の加盟クラブを国・地域から検索できるディレクトリ。
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