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盆栽になぜ、名前がある?

盆栽には、名前を持つ樹があります。

「銘(めい)」と呼ばれるその名前は、管理のための符号ではありません。何百年を生き抜いてきたこと、人から人へ受け継がれてきたこと。その樹が背負ってきた物語に、与えられる名前です。

今日は、まだ名前のない一樹をご紹介します。

名前のない、一樹

舩山コレクションを代表する千年の巨大な真柏

舩山コレクションを代表する、福島(東北地方)からきた巨大な真柏です。もとは三陸(東北の太平洋沿岸)の岩場に生き、海辺で波風に削られながら、千年とも言われる時間を生き抜いてきました。いまは名匠・木村正彦氏(世界で最も有名な盆栽作家の一人とされる巨匠)の手によって、次の時代へと姿を整えられています。

理想の姿へ近づけるため、糸魚川真柏(新潟県糸魚川産の、最高級とされる真柏)の枝を継ぐ。根をさばき、土を替える。大型の樹は、一日に数本しか手をつけられません。気の遠くなる作業が、いまも続いています。

それでも、この樹にはまだ、名前がありません。

どんな名前が、似合うだろう

これだけの物語を持つ樹に、どんな名前が似合うでしょう。

千年、波にさらされて生き延びてきた。そう聞けば、「波」。荒波を越えて福を運ぶ樹として、「福」。私なら、福を呼ぶ大波、と呼びたい。英語なら Lucky Wave、銘にするなら「大波」でしょうか。

五葉松の名木「うず潮」 大宮盆栽美術館 蔵

盆栽の銘は、こうして生まれます。五葉松の名木に「うず潮」と名づけられた一樹がありますが、それもまた、その姿から生まれた名前です。樹の物語が、そのまま名前になる。

三千年の証人、銘「北斎」

名前を持つ樹の、ひとつの頂点をご紹介します。真柏「北斎」。新潟の山で採られた野生の真柏で、樹齢は約3000年と推定されています。今年、第100回を迎えた国風盆栽展(日本で最も格式の高い盆栽展。毎年2月に東京都美術館で開催)に、記念特別展示として出品されました。

3000年と聞けば、ほとんどの人は本当だろうかと疑います。野生の真柏は、日本アルプスや新潟の山々の断崖で、極限の環境にごくゆっくりと育ちます。年輪は紙一枚ほどの幅しかありません。何千年もの歳月を経て、幹の内部は骨のように白くなり、わずかに残った樹皮が、いまも生命を支え続けている。それはもう、私たちが盆栽と呼ぶものを超えて、地質学的な時間を体現した自然の彫刻と呼ぶべきものです。

そしてこの樹もまた、手から手へと受け継がれてきました。山の採取者から、大宮盆栽村(さいたま市・世界の盆栽愛好家が集う“盆栽の聖地”)の創設者で、日本盆栽協会会長などを務めた加藤三郎氏へ。約40年前、加藤氏の手で正面を変え、大規模な改作を経て、いまの力強い姿になりました。そして加藤氏から、現在の所有者・鈴木慎二氏(長野の盆栽家)へ。3000年の時間が、リレーのバトンのように渡され、100回目の国風の舞台にたどり着いた。

銘「北斎」は、その物語を一語に畳み込んだ名前です。そして問いが残ります。これから先の100年、この樹を、誰が、どう受け継いでいくのか。

名前は、誰がつけるのか

名前をつけるのは、多くの場合その樹の所有者です。

けれど、まだ無名の樹に出会い、「この樹に名前をつけたい」と思った人が、そのままオーナーになることもあります。古くは政治家や皇族までもが名木を探し求め、手元に置いて愛でてきました。

名前をつけるとは、その樹を引き受ける覚悟でもあるのです。

そこで、あなたに聞いてみたい

私たちの作家・佐伯和希が、いま手をかけている一樹は、まだ名前がありません。あなたなら、その盆栽にどんな名前をつけますか。

佐伯の樹を見る →

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