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先週は「樹を日本に残す」というAzukariの判断について書きました。
今回はAzukari所有の仕組みについての話です。業界の現状、Azukariの構造、樹の情報、そしてサービスの設計思想——Azukariが動いていても、止まっても、樹と作家とオーナーの関係を切らさないために、私たちが何を考えながら作っているかを、順に開いていきます。
いまの盆栽取引で、消えていくもの
買った瞬間に、その樹についての多くがわからなくなる。これがいまの盆栽取引でよく起きていることです。フリーマーケットに近いところがある、と言ってもいいかもしれません。
紙の伝票が一枚、店主の記憶がいくらか、植木鉢の裏にある誰のものか分からない年号。それが「証明」のすべてということが珍しくありません。問題は樹が偽物だということではなく、樹の情報を残す仕組みが業界全体としてまだ整っていないことです。
二度三度と所有者を移ると、次のような情報が静かに消えていきます。
- 誰が作ったか — 作家の名前と所属
- 何年前から始まっているか — 樹齢と、作家の手が入った年数
- どんな樹形を経てきたか — 過去の主幹・枝の変遷
- どんな手入れを受けてきたか — 植替・剪定・針金掛けの履歴
- もとはどこにあったか — 山採りか、畑育成か、産地はどこか
これらが揃って初めて、樹は「美術品としての一本」になります。欠ければ、ただの古い木に戻ります。
Azukariが売主、作家が育てる
Azukariは2026年4月、弁護士監修で利用規約を全面的に整え直しました。骨格は単純です。
Azukariが、オーナーへの売主です。 樹を販売し、所有権を移転するのはAzukari本体です。
作家とAzukariの間には、別の契約があります。 Azukariは作家との間で、樹のケア・保管・年間管理を委託する業務委託契約を結びます。佐伯和希さんとは2026年4月に締結しました。
お支払いが完了した時点で、所有権はAzukariからオーナーへ移ります。 樹は作家のスタジオに置かれたまま、年間のケアは業務委託契約として並走します。所有と保管が、はじめから分けて設計されている——これがAzukari全体の前提です。
樹の情報は、樹に紐づく台帳に残る
ここがAzukariがいちばん時間をかけて設計してきた部分です。樹ごとに、作家・樹種・樹齢・樹形・産地・主要な手入れ履歴・所有履歴を1冊の台帳として保ちます。これらは樹に固有の情報であって、プラットフォームの所有物ではありません。
オーナーには、ご契約のプラン(1年/5年/10年)に応じてPDFの台帳が発行されます。プラン期間中の更新・追記もここに反映されます。
最初の4本のうち1本、MKT-001でAzukariが何を記録しているかを見てください。
- ID:MKT-001
- 樹種:黒松(Kuromatsu / Japanese Black Pine)
- 樹齢:45年
- 樹形:懸崖(けんがい / Cascade)
- 作家:佐伯和希
- 作品の特徴:海岸の崖から下方に垂れる姿。波と風に削られながら、光を求めて重力に逆らう形(香川の海岸地形から取られた個体)
- ステータス:Available
- 管理プラン:1年 / 5年 / 10年から選択
紙片1枚に書ける量ではあります。けれど、この8項目が作家の名で発行され、Azukariの台帳に固定され、オーナーが手元に保持できる形になることが、これまでの盆栽取引には無かった部分です。
サービスとして、もう一点お伝えしておきたいこと
Azukariがいつかなくなる可能性はゼロではありません。
FacebookやInstagramやXがアルゴリズムを変えたりAPIを閉じたりすると、そこに乗っていた周辺のSaaSが一気に動かなくなる、ということが過去何度も起きてきました。AzukariもAIやソーシャルメディアの恩恵を受けて運営しています。同じカテゴリのリスクから完全には自由ではありません。
仮にAzukariが続かなくなったとき、オーナーが失いうるのは樹そのものではなく、樹の情報と、作家との連絡経路です。だからこそ、サービスの設計思想として、ここをサービス本体から切り離せるかたちで持つことを、私たちは考えながら作っています。
いま方向性として準備しているのは、次のようなものです。
- 樹の台帳を、プラン期間中の更新も含めてオーナーの手元に届けるかたち(PDF)
- 作家との連絡経路を、必要に応じて運営者経由でつなぐ運用
- 事業の節目で、データと連絡経路の引き継ぎについて、その時点での最善のかたちをお伝えする
これらはいずれも、現時点で規約に書ききっている約束ではなく、サービスをこのように作っていきたい、という方向性です。形になるたびに、書面と運用に落としていきます。
「Azukariがあるから樹が安全」ではなく、Azukariが動いても止まっても、樹と作家とオーナーの関係を切らさない仕組みを目指す。サービスとしてはここを背骨にしようとしています。